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宇宙ニュースまとめ:打ち上げ、技術、政策、科学 – 2025年6月26日

宇宙ニュース総まとめ:打ち上げ、技術、政策、科学 – 2025年6月26日


目次

打ち上げとミッション
衛星インターネットと接続性
地球観測と環境モニタリング
宇宙政策・規制・安全保障
衛星技術とイノベーション
科学と天文学のハイライト
商業宇宙と市場動向
宇宙ゴミ、異常事象、軌道混雑
教育・アウトリーチ・レガシー
展望と新たなテーマ
結論


打ち上げとミッション

SpaceX:スターリンク、Axiom-4 など

スターリンク拡大
SpaceXはスターリンクの展開を加速し続けており、ケープカナベラルから新たに27基の衛星を打ち上げ、稼働中のコンステレーションは7,800基を突破しました。ファルコン9ブースターは20回目の着陸を達成し、SpaceXの迅速な打ち上げペースと再利用技術のマイルストーンを示しています。スターリンクのグローバルインターネットカバレッジは拡大を続けており、T-Mobileなどの通信会社との提携によるダイレクト・トゥ・セル機能や新サービスも開始されています。

Axiom Mission 4 (Ax-4) 国際宇宙ステーションへ
Axiom Spaceによる4回目の民間宇宙飛行士ミッションAx-4は、SpaceXの新型クルードラゴン「Grace」で打ち上げられました。多国籍クルーにはインド(Shubhanshu Shukla)、ポーランド(Sławosz Uznański-Wiśniewski)、ハンガリー、そしてNASAベテラン宇宙飛行士ペギー・ウィットソンが含まれています。2週間のISS滞在中に60以上の科学実験が予定されており、Axiomにとって記録的な成果であり、国際・商業宇宙飛行のマイルストーンとなります。

Rocket LabとESA:LEO-PNTナビゲーションデモ
Rocket Labは2025年12月にESAの「Pathfinder A」衛星2基を打ち上げ、低軌道位置測位・ナビゲーション・タイミング(LEO-PNT)サービスを試験します。このミッションは、ヨーロッパの次世代衛星ナビゲーションインフラ構築を支援します。

Gilmour Space:オーストラリア初の国産ロケット
Gilmour Space Technologiesは、オーストラリア初の国産・国産打ち上げ軌道ロケット「Eris」の打ち上げで歴史を刻みます。ミッションは7月初旬に予定されており、オーストラリアの主権的打ち上げプロバイダーとしての地位確立を目指します。

その他注目の打ち上げ
Alén SpaceのSATMAR:SpaceXファルコン9で打ち上げられたこのナノ衛星は、海事通信のVDES規格を検証します。
EarthDaily Analytics:次世代地球観測コンステレーションの初号機を打ち上げ成功。
TrustPointの「Time Flies」:先進的な宇宙ベースPNTサービス向けの3号機。
StarticalのIOD-2:宇宙ベース航空交通管理の2号実証機。
KongsbergのN3X:ノルウェーの海上監視コンステレーション完成。

要点まとめ
– SpaceXがフロリダからスターリンク10-16号およびAxiom-4ミッションを打ち上げ。
– Rocket LabがESAのLEO-PNTデモ衛星を打ち上げ予定。
– Gilmour Spaceがオーストラリア初の主権的軌道打ち上げに備える。
– Alén Space、EarthDaily、TrustPoint、Startical、Kongsbergが重要な衛星配備を達成。


衛星インターネットと接続性

スターリンクのグローバル展開

スターリンクの成長と提携
SpaceXのスターリンクは世界最大の衛星ネットワークであり、42,000基の衛星展開を目指しています。その低遅延・高速インターネットは、企業、IoT、一般消費者市場で世界中に提供されています。特にT-Mobileは7月23日から全国規模でスターリンク衛星を活用した携帯向けサービスを開始し、月額10ドルで衛星テキスト送信を提供、今後は緊急・データサービスも追加予定です。

ダイレクト・トゥ・デバイスと5G統合
フランス2030イニシアティブ(CNES支援)は、CTOとTDFがLEO衛星による5G接続を実証し、2030年までにフランス独自のNTNコンステレーションを目指します。ロシアの「Rassvet」スターリンク類似サービスも2025年12月に初期展開予定で、最大1Gbpsのグローバルブロードバンドを目指します。

技術競争
中国の研究者は、静止軌道から1Gbpsのレーザーデータリンクを実現しました。これはスターリンクの5倍の速度で、適応光学とモード多重受信を活用。特に遠隔地向けに衛星インターネットの速度と信頼性を再定義する可能性があります。

衛星ローミングと市場成長
Juniper Researchは、衛星ローミング、5Gスタンドアロン、eSIMがグローバル接続市場を活性化し、衛星ブロードバンド市場は年13.62%成長し、2033年には331億3千万ドルに達すると予測しています。

要点まとめ
– スターリンクが新たな打ち上げとダイレクト・トゥ・デバイス提携(T-Mobile、イタリア鉄道・軍事部門)で拡大。
– フランスとロシアがLEOおよびブロードバンドコンステレーションを加速。
– 中国のレーザー技術がスターリンクを上回る速度を実現。
– 衛星ローミングと5G統合が市場成長を牽引。


地球観測と環境モニタリング

次世代衛星

EarthDaily Analytics
EarthDailyのコンステレーションは一部運用を開始し、毎日AI対応・科学的に較正されたグローバル画像を提供しています。このシステムは産業界や政府の地球変動監視を支援し、来年には全10基体制となる予定です。

ESAのバイオマス衛星
ESAのバイオマスミッションは初のPバンドレーダー画像を公開し、世界の森林と炭素貯蔵の前例のない3Dマッピングを実現。12メートルアンテナは密林や砂、氷を貫通し、気候研究や森林管理を革新します。

TANGOと国家排出監視
TNO、ISISpace、SRON、KNMIが開発したTANGOミッションは、機動性の高いナノ衛星で産業由来の温室効果ガス(CO2、CH4、NOx)を高空間分解能で監視し、気候対策や排出検証を支援します。

英国・欧州の取り組み
英国宇宙庁は、インフラ、⽣物多様性、メタン漏洩、持続可能な農業の監視など、公共サービス変革のための衛星データ活用プロジェクトを支援。EUのMTG-S1衛星は欧州初の静止気象サウンダーで、気象・環境健康のリアルタイム大気監視を提供します。

その他の応用
武漢-1:AIによる農地保護。
Murmuration:観光影響評価のための衛星データ。
AIと衛星画像:スペイン建築物のアスベスト検出。
NASAのPACE:海色と植物プランクトンブルームの監視。

要点まとめ
– EarthDailyとESAバイオマス衛星が、毎日・高解像度・AI強化の地球観測新時代を切り開く。
– TANGOや各国ミッションが汚染物質排出・気候監視に注力。
– 英国、EU、中国が気象・環境・農業用途で衛星を展開。


宇宙政策・規制・安全保障

EU宇宙法とグローバル規制

EU宇宙法
欧州委員会はEU宇宙法を提案し、宇宙規制の統一、衛星サイバーセキュリティ強化、宇宙ゴミの追跡・除去義務化を目指しています。主な特徴:
– 衛星は25年以内(LEOは1年以内)に除去。
– サイバーセキュリティとリスク評価要件。
– 宇宙物体データベースと厳格な打ち上げ・廃棄ルール。
– 巨大コンステレーションの衝突防止調整。

国家安全保障・防衛
ICEYE-NATOパートナーシップ:ICEYEはNATOにSAR衛星画像を提供し、欧州防衛力を強化。
オランダ初の運用軍事衛星:ICEYE製SAR衛星がオランダ防衛の独立性を向上。
BAE Systems & Hanwha:ISR市場向けマルチセンサー衛星システムを共同開発。

米国政策・予算問題
– 米国衛星画像企業はNRO予算削減が国家安全保障と商業宇宙産業のリーダーシップを脅かすと警告。
– Tom Stroupは米国BEAD改革で衛星ブロードバンドの平等な扱いを主張。

国際法的紛争
– メキシコはSpaceXのロケット残骸と環境汚染について、国際法と環境影響を理由に法的措置を警告。

要点まとめ
– EU宇宙法がデブリ対策・サイバーセキュリティ・運用者責任の新基準を設定。
– NATOと欧州各国が宇宙ベース防衛・監視を強化。
– 米国は商業衛星資金・ブロードバンド政策で議論。
– ロケット残骸・打ち上げ影響を巡る法的・環境紛争が発生。


衛星技術とイノベーション

量子、AI、再利用性

宇宙における量子・エッジコンピューティング
– 世界初のフォトニック量子コンピュータがSpaceXのTransporter-14ミッションで軌道投入され、衛星のリアルタイム・オンボードデータ解析を実現。
– QUICK³ナノ衛星(欧州初の量子衛星)が、超安全・解読不能なデータ伝送のための量子通信技術を試験中。

AI駆動プラットフォーム
– MaxarのSentryプラットフォームは、複数ソースの衛星データとAIを融合し、予測インテリジェンス・リアルタイム監視・危機検出を実現。
– AIと衛星画像はアスベスト検出や環境監視などにも活用。

再利用型衛星プラットフォーム
– Lux Aeternaは完全再利用型衛星バス開発のため400万ドルを調達。耐熱シールドとパラシュートで安全な再突入・再利用を目指し、コスト削減と持続可能性向上を狙います。

先進部品・センサー
– ロスコスモスはサイズ・重量を半減する積層型メモリモジュールを導入。
– ボーダフォンは衛星誘導センサーで携帯アンテナの整列を最適化し、ネットワーク信頼性を向上。

海事・航空交通イノベーション
– Alén SpaceのSATMARやUnseenlabsのBRO-18衛星は、海上通信・RF監視を強化し、「ダーク船舶」検出や持続可能性を支援。
– StarticalのIOD-2や宇宙ベースADS-Bシステムが世界の航空交通監視を変革。

要点まとめ
– 量子コンピューティングと量子安全通信が軌道上で始動。
– AIプラットフォームが予測インテリジェンス・異常検出を推進。
– 再利用型衛星バスや先進部品がコスト・持続可能性を向上。
– 海事・航空交通管理のイノベーションで衛星応用が拡大。


科学と天文学のハイライト

ウェッブ、チャンドラ、火星探査車のブレークスルー

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)
– JWSTは初の系外惑星TWA 7 b(サターン質量、110光年先)を直接撮像し、直接検出と惑星系研究のマイルストーンを達成。
– 同望遠鏡は銀河・星雲・星団の驚異的な画像を次々と公開し、宇宙理解を刷新しています。

チャンドラX線天文台
– アンドロメダ銀河(M31)の新たな合成画像を公開。電磁波全域のデータを組み合わせ、ブラックホール活動やダークマター研究を強調。

NASA火星探査車
– パーサヴィアランスは火星岩石の研磨・分析を継続し、鉱物組成や地質史を解明。
– キュリオシティは「クモの巣」状のボックスワーク隆起構造を撮影し、古代地下水活動と火星の水の歴史を示唆。

月・惑星探査
– NASAの月周回探査機は日本のHAKUTO-R着陸船墜落地点を撮影し、失敗解析と今後の計画に貢献。
– NASAのエウロパ探査ミッションは、生命の兆候を探るため地下海の調査準備中。

太陽・大気科学
– NASAのPUNCHミッションが太陽噴出の詳細画像を公開し、宇宙天気予測を強化。
– NASA航空機がカリフォルニア上空で低空飛行し、大気汚染・温室効果ガスを調査。

宇宙考古学
– 高解像度衛星画像により、失われたエジプト都市イメトが発見され、希少な多層住宅や遺物が明らかに。

要点まとめ
– JWSTとチャンドラが新たな宇宙の知見と系外惑星直接撮像を実現。
– 火星探査車が惑星地質・水の歴史を前進。
– 月・太陽・大気ミッションが太陽系と地球環境理解を拡大。
– 衛星画像が考古学研究を革新。


投資、市場成長、新規参入

SpaceX株のトークン化
– Republicなどの投資プラットフォームが、ブロックチェーンベースの「ミラートークン」を通じてSpaceXへの小口投資機会を提供し、民間宇宙企業投資の民主化を進めています。

衛星ETFと市場指数
– 永盈国証商業衛星ETFは衛星分野の動向を反映し、最近の株式減少や資金流出は市場の変動性を示しています。

IoT・海事市場
– Plan-SはIoT衛星群を拡大し、ギガビット級アクセスと技術的自立性を強化。
– WISeKeyとFossa Systemsは暗号マイクロトランザクションと量子耐性通信のための衛星を打ち上げ、宇宙サイバーセキュリティとIoT接続を推進。

SAR画像市場
– 高解像度SAR画像市場は2030年までに2倍に成長見込み。安全保障、気候監視、小型衛星イノベーションが牽引。

要点まとめ
– トークン化やETFによる宇宙企業への個人投資が拡大。
– IoT、海事、SAR画像市場が急成長。
– 宇宙サイバーセキュリティと量子通信が商業分野の主要テーマに。


宇宙ゴミ、異常事象、軌道混雑

ゾンビ衛星と規制対応

Relay-2:ゾンビ衛星
– NASAの長期間運用停止中のRelay-2衛星(1967年以降非稼働)が、オーストラリアのASKAPで強力な電波パルスを発信。静電気放電や微小隕石衝突が原因とみられ、「ゾンビ衛星」の予測不能な挙動と宇宙ゴミ問題の深刻化を浮き彫りにしています。

軌道混雑
– 研究者が北極上空の極軌道衛星交通を撮影し、混雑と衝突リスクの増大を示しました。極軌道では1万7千以上の物体が追跡されています。

政策と対策
– EU宇宙法などの規制は、2035年までに5万基に達する見込みの衛星増加に備え、衛星除去義務やデブリ対策強化を義務付けています。

ソ連コスモス482再突入
– 1972年打ち上げのソ連コスモス482衛星が、50年以上の軌道滞在を経て地球大気圏に再突入する見込み。堅牢な降下カプセルは再突入に耐える可能性があるものの、人口密集地へのリスクは低いとされています。

要点まとめ
– 廃棄衛星が突如「覚醒」し、天文学や衛星健康監視にリスク。
– 軌道混雑とデブリ対策は緊急の規制課題。
– コスモス482など歴史的衛星が長期デブリ問題を象徴。


教育・アウトリーチ・レガシー

STEM、若者参加、宇宙遺産

学生・一般参加
– NASAワロップス島の打ち上げは学生実験を含み、米中部大西洋沿岸で観測可能。一般市民の宇宙研究参加を促進しています。
– NASA宇宙飛行士がアラバマ州の学生からの質問に答え、マーシャル宇宙飛行センター65周年を祝います。

国際協力・訪問
– 前KMT主席の馬英九氏が台湾の若者を率いて中国酒泉衛星発射センターを訪問し、両岸理解と中国の急速な宇宙進展を強調。

航空・宇宙訓練
– オハイオ州のヤングマリーンズがNASA航空チャレンジを修了し、将来の航空宇宙キャリアに備えています。

レガシーと追悼
– ボイジャー、ガリレオ、カッシーニなどのNASA宇宙機管理者ジョン・カサーニ氏が92歳で逝去。深宇宙探査とミッション管理に多大な功績を残しました。

要点まとめ
– NASAとパートナーは教育・アウトリーチで次世代を鼓舞し続けている。
– 国際訪問・協力がグローバル宇宙コミュニティを育成。
– 先駆的技術者・宇宙飛行士のレガシーが受け継がれる。


展望と新たなテーマ

宇宙の次なる展開

メガコンステレーションと接続性
– スターリンク、アマゾンのプロジェクト・カイパー、ロシアのRassvetが、地球全体を衛星インターネットで覆う競争を繰り広げ、規制・技術・市場に変革をもたらしています。

量子・AI革命
– 量子コンピューティングとAI駆動解析が理論から軌道上へと進み、安全通信、リアルタイムデータ処理、予測インテリジェンスで飛躍的進歩を約束。

気候・環境モニタリング
– 地球観測衛星は気候対策、排出追跡、災害管理の中核となり、毎日・高解像度・AI対応データを提供する新ミッションが続々登場。

政策・安全保障・持続可能性
– EU宇宙法などの新たな取り組みが宇宙ガバナンスの新時代を告げ、成長とデブリ対策、サイバーセキュリティ、国際協力のバランスを模索。

商業化と民主化
– 民間投資、トークン化、新規参入が宇宙アクセスを民主化し、商業衛星が防衛・研究・公共サービスでますます重要な役割を担う。

リスクと課題
– 軌道混雑、宇宙ゴミ、「ゾンビ衛星」への対応が喫緊の課題。
– 予算制約や国際紛争(例:SpaceX残骸問題)は、強固な政策と国境を越えた協力の必要性を浮き彫りに。


結論

宇宙産業はかつてない成長と変革を遂げています。スターリンクの拡大、量子衛星の登場、新たな規制枠組み、投資の民主化まで、情勢は急速に進化しています。地球観測、気候監視、AI駆動解析は政府・産業界・研究者にとって不可欠なツールとなりつつあります。一方で、宇宙ゴミ、軌道混雑、政策調和の課題も依然として重要です。

主なポイント
– 打ち上げペースと衛星配備は歴史的な高水準で、商業・国際ミッションが主導。
– 衛星インターネットはデジタル格差解消の切り札となり、新技術が速度・カバレッジの限界を押し広げている。
– 地球観測と環境モニタリングはグローバル課題解決の中心。
– 政策・安全保障・持続可能性が規制の最前線。
– 量子、AI、再利用技術が宇宙の可能性を再定義。

今後も、協力・イノベーション・責任ある管理が、宇宙をすべての人にとっての機会と発見の領域として守る鍵となるでしょう。


宇宙産業が地球・軌道・その先で新たな地平を切り開き続ける中、今後の最新情報にもご期待ください。