- 2024年の商業用不動産投資額は50億ユーロを超え、前年同期比約142%増となった。
- 2025年のGDP成長率は3~4%と予測されており、個人消費と投資が牽引している。
- 2025年5月、ポーランド国立銀行(NBP)はインフレ見通しの改善を受け、基準金利を5.25%に引き下げ、2023年以来初の利下げとなった。
- 2024年の新規住宅ローンは839億ポーランドズウォティで、前年比43.2%増だった。
- 2024年第1四半期の主要7都市の中古住宅取引価格の平均は平米あたり13,404 PLN、前年比8.1%上昇で、同時に新築価格は14,265 PLN/m²、前年比4.4%上昇だった。
- 2025年第1四半期の新築住宅販売は9,100戸、前年比-17.5%で減少幅は緩やかだった。
- 機関投資家によるPRS在庫は2024年時点で21,000戸超、今後数年で約25,000戸の供給が見込まれている。
- 2025年第1四半期に全国で約34万m²がリースされ、前年比約25%増となった。
- 2024年第4四半期時点でワルシャワ中心部の主要オフィス利回りは約6.0%、地方都市はこれを上回るケースが多い。
- 物流セクターは現代的倉庫在庫が約3450万m²に達し、2024年の新規供給は約400万m²、リース活動は約580万m²で、空室率は2024年末約7.5%、2025年半ばには約8.5%へ上昇する見込みだが需給は均衡している。
はじめにと経済概観
2025年のポーランド不動産市場は、堅調かつダイナミックな状況を維持しており、強靭な経済と投資家の強い関心によって支えられています。2024年は極めて活発な年となり、商業用不動産への投資額は50億ユーロ超まで倍増し(前年同期比約142%増) [1]。2025年のGDP成長率は3〜4%と予測されており、個人消費と投資が牽引しています [2]。2022〜2023年にかけてインフレ率が急上昇しましたが、現在は低下傾向にあり、利下げの余地が生まれています [3]。2025年5月、ポーランド国立銀行(NBP)はインフレ見通しの改善を受け、2023年以来初めて金利を引き下げ(基準金利を5.25%に)ました [4]。失業率は過去最低水準にあり [5]、賃金上昇も続き、住宅需要と小売消費を下支えしています。インフレの沈静化、予想される金融緩和、堅実な労働市場の基盤というマクロ経済的状況が、ポーランド不動産市場全体に前向きな展望をもたらしています。
政府の政策も大きな影響力を持ちます。2023年半ばに開始された国の住宅ローン補助プログラム「ベズピェチュニ・クレディット2%(安全なローン2%)」は、住宅ローン新規件数を大きく押し上げました(2024年の新規住宅ローンは839億ポーランドズウォティ、前年比+43.2%) [6]。これは初めての購入者にとって住宅の手頃さを高めましたが、その一方で住宅価格高騰を招き、当局は支援策の見直しを迫られました [7]。後継プログラムの導入計画は棚上げされ、代わりに初回購入者がより安価な中古住宅を購入できるよう支援する新たなイニシアティブ(「ピェルシェ・クルチェ」=「ファースト・キーズ」)が検討されています [8]。また、複数物件所有者への課税など他の政策も議論され、投資家にとって若干の不確実性をもたらしています [9]。しかし総じて、ポーランドは比較的オープンで投資家に優しい不動産市場環境を維持しています。同国は中東欧で最も魅力的な国際不動産投資先とされており [10]、2024年の商業用不動産投資の9割超が海外ファンドによるものでした [11]。(ポーランドは国内資本の参入拡大を目指しREIT法制化を進めていますが、2025年時点では未成立のため、海外投資家が依然として市場で支配的役割を担っています [12]。)
以下のセクションでは、住宅、オフィス、商業施設、工業用地、土地など全主要不動産タイプについて、地域別価格動向、賃料利回り、需給バランス、政策の影響、主なリスク、海外資本の影響、3~5年後の各分野の予測まで包括的に分析します。
住宅不動産:住宅市場動向と賃貸セクター
価格上昇の鈍化:激しい上昇の期間を経て、2025年のポーランド住宅市場は安定化へ向かっています。住宅価格インフレは二桁台から一桁台まで鈍化しました。2024年第1四半期、主要7都市の中古住宅取引価格平均は平米あたり13,404PLN(約3,460米ドル)で、前年比8.1%上昇 [13]。新築(一次市場)価格平均はPLN 14,265/m²(約3,686米ドル)、前年比で+4.4%の上昇 [14]。2025年第1四半期も価格上昇ペースはさらに鈍化したものの、なおプラスを維持しています。下表は2025年第1四半期時点の主要都市の平均マンション価格です。
都市 | 平均価格(中古) 2025年第1四半期 PLN/m² | 前年比 (2024Q1比) | 平均価格(新築) 2025年第1四半期 PLN/m² | 前年比 (2024Q1比) |
---|---|---|---|---|
ワルシャワ | 16,459 PLN (~$4,250) | +8.1% | 16,383 PLN (~$4,233) | +3.1% |
クラクフ | 15,099 PLN (~$3,900) | +10.6% | 15,686 PLN (~$4,053) | +6.6% |
ヴロツワフ | 12,675 PLN (~$3,275) | +9.3% | 14,257 PLN (~$3,684) | +11.1% |
ポズナン | 10,831 PLN (~$2,800) | +6.1% | 12,328 PLN (~$3,185) | +5.3% |
グダンスク | 12,279 PLN (~$3,170) | +0.3% | 13,240 PLN (~$3,420) | +6.9% |
グディニャ | 11,544 PLN (~$2,983) | +8.2% | 12,907 PLN (~$3,335) | +7.8% |
ウッチ | 7,799 PLN (~$2,015) | +4.1% | 9,781 PLN (~$2,527) | +0.3% |
このデータは地方間の大きな格差を裏付けています。ワルシャワは依然として最も高価な市場で、平均価格は16.4千PLN/m²(約3,500ユーロ) [17]。クラクフやヴロツワフといった他の大都市がそれに続き、ポズナンやグダンスクは中程度の価格帯となっています。ウッチやブィドゴシュチュのような中小都市ははるかに手頃で—たとえばブィドゴシュチュでは平均PLN 7,400〜9,400/m²と、主要都市中最も安価な部類です [18]。このように、ポーランドの住宅市場は高度に分化しており、ワルシャワと最安都市との間には約2〜2.5倍の価格差があります。
需要と供給のダイナミクス:2024年は住宅ローン金利上昇や政策不透明感により住宅需要が減速しました。JLL/NBPデータによると、2024年の新築住宅販売数(主要6都市合計)は39,649戸で、前年比–31%の大幅減少 [19]。2025年第1四半期も販売は低調(9,100戸、前年比–17.5%)でしたが減少幅は緩やかとなり、市場の安定化の兆しが見えるようになりました [20]。開発業者は需要の弱まりを受けて着工を減速させましたが、過去最高水準の売れ残り新築物件が一部都市で市場に残っています [21] [22]。例えばクラクフやヴロツワフでは完成済み未販売物件の在庫が膨らみ、かつてのポズナンのような需給不均衡が生じています [23]。ウッチでは在庫量が非常に多く、現在の販売ペースでは既存新築供給の消化に2年以上かかる見込みです [24]。ワルシャワは流動性が高く在庫消化も速いですが、現在は買い手の選択肢や交渉力がパンデミック期の高騰時に比べて大幅に増しています。
この需要の冷え込みにはいくつかの要因があります。住宅ローン金利は依然として高水準にあり(2025年初頭の新規住宅ローンで平均約7.5%、2022年の8%以上の高値からはやや低下)、多くの購入希望者が価格面で参入できない状況となっています。 [25]また、複数物件を所有する投資家への課税強化の議論が投資家心理を冷やしています。 [26]さらに、一部の世帯は政府支援策を待って購入を控えており、補助金の復活への期待や、価格プロモーションや金利低下を見越して延期する動きも見られます。 [27]また、ウクライナで続く国境を接した戦争など地政学的リスクも購買意欲に慎重さをもたらしています。 [28]
最近の減速にもかかわらず、専門家は暴落ではなく「ソフトランディング」になると予測しています。広範な賃金上昇(ポーランドは実質賃金が上昇傾向)と金利の見通し改善が今後の住宅需要を下支えするとみられています。 [29]OtodomおよびPolityka Insightの分析では、2025年の住宅販売は健康的な水準で安定化すると予想 – 2021年のブーム期には戻らないものの、大きな下落やデベロッパー倒産の波は回避される見通しです。 [30]また、Dom Developmentなどの開発会社も「市場は均衡に向かうだろう。価格下落は予想せず、価格上昇はインフレ率とほぼ同じか若干下回るペースになるだろう」としています。 [31]つまり、住宅価格は今後ポーランドの消費者物価上昇率(CPI、おおよそ4~6%)程度の緩やかな上昇が予想され、過去の二桁台の急騰は見込まれていません。2025年末の利下げ予想が買い手や住宅ローン需要を再び刺激する可能性もありますが、 [32]いずれにせよ未販売在庫が消化されるまでは急激な需要拡大にはつながらないともみられています。 [33]
住宅不足と賃貸市場の成長: ポーランドは、依然として構造的な住宅不足に悩んでいます。推計によれば、西ヨーロッパ並みの1人当たり住宅供給水準を実現するには数百万戸の新規住宅が必要とされています。 [34]こうした根本的な不足に加え、ポーランドへの高い移民流入(ウクライナからの避難民や外国人労働者)が長期的な需要の基盤となっています。従来ポーランドの民間賃貸市場は小規模でしたが、近年は急拡大しています。若い世代による流動性重視、高い住宅価格・ローン金利による持ち家志向の低下、2022年以降のウクライナ難民流入など、様々な要因で賃貸需要が急増しました。その結果、家賃が上昇し、賃料利回りも改善しています。
2025年初頭時点でも家賃は上昇傾向にありますが、以前よりもペースは緩やかです。実際の住居家賃は、2025年4月時点で前年比約4.2%増(1年前の5.4%増から減速)となっています(Eurostatの調和消費者物価指数による)。 [35]Otodomの調査では、2025年3月のポーランドの平均募集家賃は月額3,581PLN(約925ドル)で、1年前より約2%高くなっています。 [36] [37]この平均値は実際、2024年末からはやや低下傾向を示し(前年9月以来の低水準)、ポストコロナ・難民急増後の家賃高騰が収束しつつあることも示しています。 [38] [39]家賃は「緩やかだが着実」に上昇し、過去1年間で月次でおおよそ+0.3%ずつ伸びています。 [40]
地域による家賃格差も顕著です。例えばワルシャワは全国で最も高く、アパート平均月額4,900PLN(約1,050ユーロ)に達し、以下クラクフ、トリシティ(グダンスク・グディニャ・ソポト)、ヴロツワフなど大都市が続きます。 [41]対してキェルツェといった中小都市は月額2,000PLN(約430ユーロ)前後となっています。 [42]下表は2025年3月時点の主要都市家賃です:
都市 | 平均月額家賃 (2025年3月) | 前年比変化 |
---|---|---|
ワルシャワ | PLN 4,906 (≈$1,268) | +0.3% |
クラクフ | PLN 3,273 (≈$846) | +3.7% |
ヴロツワフ | PLN 3,057 (≈$790) | +0.3% |
トリシティ(グダンスク/グディニャ) | PLN 3,164 (≈$818) | +3.0% |
ポズナン | PLN 2,564 (≈$662) | +3.4% |
ウッチ | PLN 2,191 (≈$566) | +3.9% |
出典: Otodom家賃レポート(2025年3月) [43]。
ワルシャワの家賃はウッチのような中規模都市のおよそ2倍となっており、売買市場における価格ギャップと同様の傾向です。注目すべきは、住宅賃貸物件の利回りも改善していることです。ポーランド全体のアパートのグロス賃貸利回りは現在6.13%で、昨年末の約6.0%から上昇しました。 [44]主要都市では、ビドゴシュチが最も高い6.65%程度(購入価格の安さが要因)となっています。 [45]ワルシャワも高家賃により約6.5%の利回りで、調査対象ではポズナンが最も低く~5.36%でした。 [46]この5~6%という利回りは欧州基準でも非常に魅力的で、現行の住宅ローン金利を上回るため、投資家家主を惹きつける要因となっています(投資住宅への税制不透明感があるにもかかわらず)。
Build-to-Rent(PRS)市場の拡大: ポーランドでの民間賃貸セクター(PRS)は大きく変化しつつあります。従来は小規模な個人貸主が主体でしたが、現在は大規模な賃貸アパートメントを開発する機関投資家の参入が進んでいます。2024年時点で、主要都市におけるポーランドの機関PRS在庫は21,000戸超に達し、今後数年で約25,000戸が供給予定です。 [47]既存の機関賃貸物件全体の約4割がワルシャワに集中していますが、クラクフやヴロツワフでもBuild-to-Rentプロジェクトが活発です。実際、クラクフのPRS市場は全国第3位に拡大しており、2024年時点で3,400戸超が稼働、約2,000戸が建設中です。 [48] [49]高い資金調達コストや不動産価格の高騰を受け、若い専門職や転居者など多くの人々が賃貸への移行を促され、こうしたプロによる運営物件の需要が高まっています。 [50] [51]PRSの稼働率も非常に高く、例としてクラクフの賃貸プロジェクトは2024年末時点で空室率が3.9%まで低下(1年前は6.5%)しており、大量の新規供給にもかかわらず高水準を示しています。 [52]新しいPRSの入居者には外国人駐在員やウクライナ人も多く、移民が賃貸需要を支えていることが浮き彫りになっています。 [53]供給拡大で借り手の選択肢は増える一方、住宅供給全体の不足から、賃貸市場は当面タイトな状態が続く見通しです。2025年までに約12.9%のポーランド世帯が賃貸で暮らしており(西欧より未だ低水準)、賃貸の社会的認知が高まるにつれてこの比率は拡大傾向です。 [54]このPRSの拡大と初回購入者向け政府支援策が、長年の旺盛な持ち家需要後の市場均衡化を徐々に後押ししています。
外国人バイヤー:興味深いことに、外国人バイヤーがポーランドの住宅市場でますます活発になっています。特に主要都市や郊外でその傾向が顕著です。大手デベロッパーの最近の調査によると、いくつかの新規プロジェクトでは、2024年には海外からのバイヤーがクライアントの30%以上を占めました [55]。最大のグループはウクライナ人(多くは戦争の影響でポーランドに定住)、次いでベラルーシ人、その他アジアや中東欧諸国からのバイヤーが続きます [56]。デベロッパーは、家族や仕事をポーランドに移すなど、長期的に生活することを計画する外国人の関心が明らかに高まっていると報告しており、彼らはポーランドの不動産を安定した投資先と見なしています [57]。ポーランドは外国人によるマンション購入にほとんど制限を課していません(EU市民は自由に購入可能、非EU市民も一般的に可能ですが、農地のように特定の種類の物件には許可が必要です)。このような外国人による需要の高まりは、特にワルシャワやクラクフの新築物件に追加の支えを提供しています。また、ポーランド経済や生活環境への信頼も反映しています。
見通し:2025~2026年のポーランド住宅市場についてコンセンサスは、価格の下落というよりも安定化という見方です。デベロッパーや銀行(例:PKO BP)は、価格が大幅に下落するとは予想しておらず、インフレに合わせて価格が横ばいまたは緩やかに上昇する可能性があると見ています [58] [59]。予想どおり、2025年後半にポーランド中銀(NBP)が約100ベーシスポイントの利下げを行えば [60]、住宅ローンの借りやすさが改善し、滞っていた需要が一部開放されるでしょう――ただし、融資基準が慎重なままなので段階的になる見込みです。住宅の手頃さは、2022~2023年の非常に厳しい水準から、価格上昇の鈍化や資金調達コストの緩和により、多少改善する可能性があります。政府の新しい「ファースト・キーズ」プログラム(中古住宅対象)も2025年には初めて家を買う層の支援になる可能性があります [61]。ただし、新築住宅の価格を過度に押し上げることはない見込みです(過去のプログラムにはこの点への批判がありました)。注意すべきリスクには、利下げのタイミングや幅(遅れや小幅の利下げでは低迷の長期化)、意外な政策介入(例えば大家課税や家賃規制の強化、現時点で予定はされていませんが)、より広範な経済状況が含まれます。しかしポーランド経済は依然拡大し、失業率も低いため、大幅な需要ショックのリスクは低いと考えられます。外的ショックがなければ、住宅需要は今後1~2年かけて徐々に堅調になり、供給は抑制されている(デベロッパーが新規プロジェクトを控えている)ので、バブルや暴落ではなく、控えめな価格上昇を伴う市場均衡の回復が期待できるでしょう。ある住宅レポートはこうまとめています:「(2025年には)販売数は2020~2021年の高水準には戻らないものの、大きな下落は回避して安定を維持するだろう」 [62]。住宅不足と移民による人口増加が、中期的な住宅市場の見通しを力強く下支えしています。
オフィス不動産:限られた新規供給と高品質志向
市場規模と回復:ポーランドのオフィス市場はパンデミック時代の課題から粘り強く回復しています。国内の近代的なオフィスストックは現在、主要9市場(ワルシャワと8つの地方都市)で1,300万m²を超えています [63]。注目すべきは、主要地方都市(680万m²)のオフィス在庫がワルシャワ(630万m²)を上回ったことです [64]。これはクラクフ、ヴロツワフ、トリシティ、ウッチ、ポズナン、カトヴィツェなどのビジネス拠点の成長を示しています。パンデミックの落ち込みから2022~2024年にかけて、オフィスリース需要は力強く回復しました。年間の成約面積は、ロックダウン期を除き、2017年以降毎年140万m²を超えています [65]。2024年の総リースボリュームは約145万m²と見込まれます [66]。企業は積極的にリースを更新し、スペースの最適化を図っています――多くの企業で拠点を集約または縮小し、より高品質なスペースへと移行しているため、更新契約が取引ボリュームの約半分を占めます [67]。重要なのは、2025年第1四半期に需要が加速したことです:全国で約34万m²がリースされ、前年比25%増加しました [68]。うち、ワルシャワは約16万m²(主に新規契約)、地方都市は合計18万m²超(こちらは更新が多い)となっています [69]。これは、首都以外の地域で入居テナントの活動が活発化していることを示しており、多くの企業が地方市場の近代的な物件へ拡張・移転しているといえます。
空室率と供給不足:パンデミック下での縮小と新規竣工が重なった2021~2022年に、ポーランドのオフィス空室率はピークを迎えました。2024年末時点で、主要市場全体の空室率は約14%でした [70](総空室184万m²、そのうち地方都市が117万m²) [71]。ワルシャワの空室率は当時11~12%で、地方都市の平均はさらに高く(十数%台)、しかし状況は変わりつつあります。2025年には空室率は低下傾向になる予想です。主な理由は、新規供給が大幅に減少しているためです [72]。開発活動は2023~2024年に数年来の低水準となりました。2024年には、主要地方都市すべて合わせても新規供給は20万m²未満という状況です [73]。ワルシャワの供給計画も鈍化しており、2025年の完成予定はわずか13.5万m²(ピーク時の30万m²超に対し大幅減) [74] [75]。実際、2025年第1四半期は過去20年で最も新規オフィス竣工が少なく、ワルシャワとポズナンでそれぞれ中規模案件が1件ずつのみ竣工しました [76]。
2025年には全国の新規供給総量は30万m²未満と予測されており、地方都市では「過去最低水準」の新規竣工となる見通しです [77]。デベロッパーは依然慎重姿勢で、テナントの事前契約が取れたり、空室がさらに下がったりしない限り、多くのプロジェクトは着工を延期しています [78] [79]。また、ワルシャワを中心に老朽化や非効率なオフィスビルが廃止・用途変更されており [80]、これが市場から供給を一部減らし新規供給のプラス効果を相殺しています。ワルシャワ中心部では、開発可能な用地の不足も新規タワー建設の拘束要因となっており、十分な事前契約なしに大規模案件は計画されませんし、中心部の土地も希少です [81]。二次的なサブマーケットでも、資金調達が改善し事前契約が確保されるまでは建設再開は見込めません [82]。
これらの動態の結果、過剰供給は徐々に緩和されています。2025年初頭時点で、ワルシャワの平均空室率はわずか10%強まで低下しています [83]。これはピーク時からの改善です。さらに、ワルシャワ市内でも大きな差が見られ、都心部の空室率はわずか約7%である一方、Służewiec(「モルドール」)のような郊外エリアでは20%超に達しています [84]。これは質と立地へのシフトを示しており、企業は古い郊外オフィスを手放し、中心部の交通利便性の高いビルを選好していることが分かります。地方都市では、平均空室率は依然として高く(2024年末時点で主要都市では17~18%程度) [85] [86]、都市ごとに傾向は異なります。クラクフやカトヴィツェでは(旺盛な吸収によって)空室率が低下し始めましたが、ブロツワフやポズナンではわずかに空室率が上昇しています [87]。例えば、クラクフ(オフィスマーケットで2番目の規模、180万m²)では2025年第1四半期に約57,000m²の吸収があり、建設中はわずか約86,000m²でした [88] [89]。需要と供給の締まりが進み、それが空室率低下につながっています。全体として、2025~26年の新規供給が限定的であるため、ワルシャワおよび多くの地方都市で空室率のさらなる低下が予想されています [90]。オフィス市場は2026年までにより健全なバランスへ向かう見通しです。
賃料とテナントの選好: パンデミックや近年の運営コスト上昇にもかかわらず、オフィス賃料は概ね安定しています。賃貸人は表面賃料の大幅な引き上げを控え、インセンティブを活用して実質賃料を調整してきました。2025年初頭時点で、ワルシャワ中心部の主要物件の希望賃料は月額およそ€18~€27/m²の範囲です [91](建物のグレードや場所による。ランドマークとなる新タワーは約€25~27)。非中心部のワルシャワオフィスはおよそ€10~€17/m²となっています [92]。主要な地方都市では、Aクラス賃料は概ね€9~€19.5/m²の範囲です [93]。クラクフやブロツワフが上限(平均で10ユーロ台半ば、最上位新築は約€18~19)、Łódźやシュチェチンなど小都市は下限側です。2024年に特定市場で若干の上昇は見られました(例えばクラクフでは空室率低下により主要賃料が約€0.5上げられた)が、大幅な賃料急騰はなく、テナント獲得競争が高止まりしていました [94]。2025年には良質なスペースの吸収が進み、一等地における貸し手優位の状況が賃料の緩やかな上昇につながる可能性があります。サービスチャージ(公共料金等)は2022~2023年にエネルギー費高騰で上昇しましたが、2024年には安定し、テナントも総占有コストに順応しつつあります。
重要なのは、テナントが質を優先し、量を抑える傾向が強まっていることです。現在「フライト・トゥ・クオリティ(質への移行)」が進行中で、企業は従業員を職場に惹きつけるため、モダンでサステナブルな立地・アメニティ付きオフィスを好みます。「テナントは引き続き新しい建物を好み、高水準および一等地を評価している。財務条件・立地・交通アクセスが依然として重要」だと主要オフィスアドバイザーは語ります [95]。実際、ワルシャワでは2025年第1四半期にリーシングされた多くのスペースが中心部の新しい建物だったことに表れています [96]。グリーン認証や効率的な換気、柔軟なレイアウトのない旧タイプのオフィスはテナント維持に苦しんでいます [97]。こういった旧ビル(特に1990-2000年代築)はリノベーションしなければ陳腐化のリスクがあります。すでにESG基準への対応として、スマートエネルギーシステムの導入、空気質の改善、コラボレーションスペースの創出などで資産のアップグレードが進み始めています [98]。現代的なESG・ウェルネス基準を満たせないビルは空室長期化や賃料下落リスクにも直面します [99]。そのため市場は本質的に分化し、人気の高い高スペック物件(低空室・安定賃料)と、人気の低い旧式物件(高空室)に二極化しています [100]。実例として、ワルシャワではウォラ地区の新築高層ビルはほぼ満室ですが、郊外Mokotówの旧オフィスは空室率20%超・賃料割引となっています。
もう一つのトレンドはスペースの最適化です。多くの企業がCOVID前よりやや小さめのオフィスを賃貸しており、ハイブリッド勤務や効率化の動きが反映されています。Newmarkの調査では、平均リース面積は近年縮小していると指摘されており [101]、テナントがスペース集約・ホットデスキングへ移行している様子がうかがえます。それでも全体需要は底堅く、吸収はプラス維持。コワーキングやフレックスオフィスの事業者も再び拡張しており、条件柔軟なスペースを求める企業の受け皿となって一部空室を吸収しています。
投資と利回り: 2024年後半には金利動向の見通しが立ち、ポーランドオフィスへの投資家需要も回復しました。ワルシャワUNITオフィスタワーの約2億8000万ユーロでの取得など、大型取引が複数成立 [102]。合計でオフィスは2024年投資額の約33%(約16億~17億ユーロ)を占めました [103] [104]。海外投資家は西欧に比べ高いリターンを求めてポーランドへ流入しています。ワルシャワ中心部の主要オフィス利回りは2024年第4四半期時点で6.0%程度で、ベルリンやパリ(約3~4%)より大幅に高い水準です [105]。地方都市の主要オフィスは、リース期間や信用力によってさらに高利回りになる場合もあります。利回りは2023年後半に安定し、投資家心理の改善に伴い今後は若干の圧縮(低下)の兆しも [106]。ポーランドは西欧市場に比べリスクプレミアム・高いインカムリターンを提供し、グローバル資本が流入し続けています [107]。国内投資家は依然少数派(REIT制度未整備等)ですが、ドイツ・米国・アジア系ファンドによるポーランドオフィス資産への関心も高まりつつあります [108]。2025年の取引パイプラインも堅調で、ポートフォリオ売却や新規参入の動きも見込まれます。
見通し: ポーランドのオフィスマーケットは2025~2026年にかけて景気循環の上昇局面にあります。過剰供給がほとんど見込まれないため、主要セグメントでは徐々にバランスが貸主側に戻りつつあります。空室率は今後も下がり続ける見込みで、ワルシャワは2026年までに空室率が一桁台に近づく可能性があります。一等地の賃料水準は供給が逼迫するにつれ緩やかに上昇する可能性があり、需要が堅調であれば数年内にワルシャワのプライム賃料が€30に達するかもしれません。しかし、市場の階層化は続き、二次立地や古いクラスBビルは(改修や住宅など他用途への転換により)競争力を維持する必要があります。新規開発は2025年末~2026年まで限定的にとどまる見通しですが [109]、金利低下や資金調達の改善により次の開発サイクルが始まる可能性があります [110]。既に許認可取得を進め、経済状況の改善を待っている開発業者もいます。また、ポーランド経済が順調であれば、オフィス雇用の成長(技術、ビジネスサービス、R&Dセンター等)も継続し、特に地方のテックハブで空室吸収が進むでしょう。一方、リモート・ハイブリッドワークのトレンドが新たなリスク要因となっています。多くの企業がオフィス回帰を進めているものの、ハイブリッドワークは当面続き(出勤率が50~80%が「通常」に)、今後のスペース需要を抑制する可能性があります [111]。それでもポーランドのオフィスセクターは柔軟性を示しており、テナントは品質やESGを重視し、貸主は供給調整や資産のアップグレード、投資家は長期的な見通しに楽観的です。Knight Frankも指摘したとおり、市場は「調整局面」にありますが、需要が安定し新規供給がきわめて限定された状況では、今後、質の高いオフィスで健全な均衡と賃料上昇の余地が整いつつあります [112]。
リテール不動産:高稼働率、リテールパークのブームと変化する消費者トレンド
パンデミック後の強い回復:ポーランドのリテール不動産セクターはパンデミックの困難をほぼ克服し、新たな成長を示しています。ポーランドの消費支出は賃金上昇や低失業率に支えられ名目で増加していますが、2022~2023年は高インフレによって実質小売売上高は抑えられました。2024年には小売売上の成長が安定し、ショッピングセンターへの来店者数も回復しました。2025年初め、小売業者も慎重ながら楽観的です。「ポーランドのリテールセクターは、世界的な不透明感や過去のインフレにもかかわらず、将来に楽観的になれる。購買力は上昇しており、eコマースは今や実店舗の脅威ではなく、補完する存在だ」とBNPパリバ・リアルエステートのリテール部門責任者は述べています [113] [114]。
リテールパークの新規供給ブーム:特に大都市圏外でリテール開発のミニブームが目立っています。2024年には54万5,000m²の新規リテールスペースがポーランド全土で供給されました [115]。これは2015年以来最大の年間増加です。特にリテールパークや単独立地のリテール倉庫への開発が盛んで、利便性や車での利用を求める消費者ニーズに応えています。2024年上期だけで約30万m²のリテールストックが増加、2025年第1四半期にはさらに4万2,000m²がオープンしました [116]。2025年通年で約40万m²の新規供給が見込まれており、2024年の水準とほぼ同等です [117]。この2年間の波は、2010年代終盤に新規リテール開発が大きく減速していたことを考えると特筆されます。既存施設の拡張や、空白地帯の小規模計画も多く、例えば2025年初にはM Park Mrągowo(15,000m²)、OTO Park Żagań(6,500m²)、M Park Brzeziny(5,800m²)などリテールパークが開業し、チェンストホヴァのAniołów Parkも拡張されました [118]。新規開発パイプラインも約45万m²が建設中(一部は旧ハイパーマーケットの業態転換)と力強く [119]。主な案件としてDesigner Outlet Kraków(21,000m²、2025年5月開業) [120]、Przystanek KarkonoszeおよびSiemianowiceのOTO Park(いずれも約17~18千m²)が挙げられます [121]。これらの新規開業の主役はリテールパークであり、開発業者がオープンエアで低コスト、かつ(ロックダウン期間中も営業可能だった)利便性の高いフォーマットにシフトしていることが示されています。
高稼働率と回復:この新規供給にもかかわらず、ポーランドのリテール物件は高い稼働率を維持しています。2024年中頃、16大都市圏の平均空室率は約3.3%と、前年比0.3ポイント改善しました [122]。2024年末には約3%に低下しています [123]。これだけ低い空室率は、需要が供給に追いついていることの証です。実際、2024年には8大都市のうち6都市で空室率が低下しました [124]。クラクフとヴロツワフだけがわずかな上昇(シュチェチンは横ばい) [125]で、これは新規開業の一時的な影響が主因です。それ以外では、特に食品スーパー、バリュー業態、DIY、特定のファッションブランドなどが新業態への拡大や既存物件への再出店を進めてきました。大都市圏のショッピングモールの平均稼働率は97%以上と、通常のテナント入れ替えを除けばほぼ満室です。
来店者数や売上データも好調を裏付けています。ポーランド・ショッピングセンター評議会(PRCH)によれば、2025年初のショッピングセンター来店者数は前年同月をわずかに上回り、2025年1月の来店者数は前年比+0.4%、テナント販売高は+2.6%増でした [126]。これは、クリスマス後の消費回復や、冬休み前の早期消費が示唆されます。カテゴリー別では、サービス(+6.6%)、専門店(+6.2%)、ヘルス&ビューティー(+6.1%)の売上増が目立ち、パーソナルケアや裁量支出に再びお金が回るようになったことを示しています。買い物行動も正常化しつつあり、実店舗とオンラインが新たな均衡を見出しています。ポーランドでのeコマース売上比率は2025年3月時点で約9%で安定しています [127]。今やオンライン販売は実店舗を食い荒らすのではなく補完的とみなされ、多くの小売業者がオムニチャネル戦略をとり、消費者も両チャネルを使い分けています。つまり、eコマースはショッピングモールの存続を脅かす存在ではなく、リテールエコシステムを構成する一要素に過ぎません [128]。
しかし状況は一様に順風満帆ではありません。実質(インフレ調整後)の小売売上は2023~2024年に弱含みとなりました。2025年初頭もインフレの影響で消費者の購買力が低下し、前年比でわずかなマイナス成長となりました。例えばポーランド統計局のデータによると、2025年3月の実質小売売上高は前年同月比0.3%減(2カ月連続の前年比減少)でした [129]。消費者は依然として物価高や経済不安から慎重な傾向があります。ただし月次では3月に前月比14%増を記録しており(季節要因)、 [130]今後インフレのさらなる収束と賃金上昇が進めば、2025年後半には消費者マインドが改善し、小売業の成長も強まる見通しです。
小売フォーマットと課題:ポーランドの小売不動産における主要な構造的課題は、ショッピングセンター在庫の高齢化です。小売スペースの約70%が10年以上経過しており、 [131]、2000年代の第一世代モールの多くは、現代の買い物客の期待に応えるためにリニューアルが必要になっています。家主たちは積極的に改装やアップグレード、新たなアトラクションの追加に取り組んでいます。代表的な例としてはウッチのNowa Sukcesjaセンターがあり、苦戦の末に「Hopa Lupa」という3万㎡もの巨大エンターテインメントゾーンに生まれ変わろうとしています。このゾーンにはトランポリンパークやゴーカートトラック、その他様々なレジャー施設が含まれています。 [132] これはより広い傾向を反映しています:小売家主がF&B(飲食)、エンターテインメント、体験型要素を加え、来館者数や滞在時間を伸ばしています。この流れは今後も広がるでしょう。これからは、映画館やフィットネス、ファミリーエンターテインメント、ダイニングなどが融合し、ショッピングの一部カテゴリーがオンラインシフトする中で、モールが存在意義を維持しようとする動きが進むと予想されます。
もうひとつポーランド特有の要因としては、日曜日の営業禁止法が挙げられます。2018年以降、多くの店舗はほとんどの日曜日に営業できなくなりました。この法律は週末の来館者パターンに影響を与え、モール側は平日のイベント増加や飲食店・映画館(これらは除外対象)を強化するなどで対応しました。レポートでは明示的に言及されていないものの、ポーランド小売業界の運営を支える根本的な要素の一つです(加えて、多くのスーパーマーケットが特定の日曜日に営業できるリテールパークが人気を得た理由の一つとも考えられます)。
小売業者の意識: 国際ブランドは一般的に、人口が多く中間層が拡大していることから、ポーランド市場を好意的にみています。2024~2025年には、新規参入や拡大が複数見られ、ワルシャワの高級ブランドや地方都市のバリューブランドにも広がっています。消費者信頼感は2022年に隣国での戦争と高インフレで低迷しましたが、回復基調にあります。依然として慎重な姿勢(取引量の微減に見られるように)は残っていますが、インフレが和らぐ2025年には実質的な消費も増加が見込まれます。これは家主にとっても追い風となり、売上増加は健全なテナントや家賃の指標化(インデックス化)につながります。
投資と利回り: 小売不動産投資市場は2024年に大きく回復し、ポーランドの商業用不動産投資額の約32%を占めました。 [133] 代表的な取引として、ポーランド最大級のモール2件—カトヴィツェのSilesia City CenterとヴロツワフのMagnolia Park—が南アフリカの投資家NEPI Rockcastleによって、それぞれ4億500万ユーロ・3億7300万ユーロで取得されました。 [134] さらに中規模リテールパーク6施設のポートフォリオも2億8500万ユーロで売却されました。 [135] これらの取引は、ポーランド小売資産、特に優勢なショッピングセンターや利便性の高いリテールパークへの信頼の回復を示しています。プライムなショッピングセンターの利回りは2024年末時点で約6.25%まで拡大しました。 [136] これはパンデミック前(約5.0%)より大きく上昇しています。この利回り上昇は、世界的な価格再調整(高金利の影響)及び小売へのリスク認識の高まりを反映しています。しかし、ポーランドの小売利回りは西ヨーロッパより高いことから、マーケット安定化によるアップサイドも期待されています。 [137] リテールパークは安定した収益性で特に人気が高く、利回りはモールと同等か、リース期間やテナント構成によってはやや高い設定となっています。
地元での小売(その他も含む)投資の制約の一つは、REIT(不動産投資信託)の不在です。先述の通り、ポーランドの商業用不動産投資の90%以上が海外資本によるものであり、 [138] 国内機関投資家や個人が投資できるREIT構造がないことが一因です。政府は長らくREIT法導入を議論しており、施行されればショッピングセンターなどへの国内資金流入が期待できます。しかし2025年時点でもREITは存在せず、これは業界関係者が「依然として不在」と指摘する欠落部分となっています。 [139]
見通し: 今後3~5年間のポーランド小売不動産の見通しは、慎重ながらも前向きです。低空室率、消費者購買力の拡大、大都市での新規モール供給の限定など、基本的なファンダメンタルズは安定を示しています。高い稼働率が持続し、特に成績の良いショッピングセンターや食料品核のリテールパークで顕著となるでしょう。プライムセンターの賃料は、インフレ連動指数に合わせて安定またはやや上昇する可能性があり、優良立地に対するテナント需要の強さが背景です。二次的資産(古いセンターや供給過剰地域)には刷新の圧力がかかり、対応が遅れれば空室増加もあり得ます。小規模都市でのリテールパーク開発の成長も継続するでしょう。このフォーマットは現在の消費者志向(利便性、屋外、ローカル志向)に合致しています。小売業者は、ディスカウントスーパーやDIYストア、国際ファッションチェーンなど、依然として小売不足の中規模都市向けに店舗拡大を進める見込みです。
消費支出は変動要因です。もしインフレが2025年に約4%、2026年に約3%に下がれば(予測通り) [140]、実質賃金が上昇し小売販売量の拡大を支えます。さらに、移民による人口増加で新たな消費者が加わっています。このため、リテールスペース需要は緩やかに増加が見込めます。一方、Eコマースの割合は今後も着実に増え(例えば2028年までに約9%から10数%台へ)、物理的な小売スペース要求を一部抑制する可能性があります(特に家電や書籍ジャンルでは既に多くがオンライン化)。しかし、食品、飲食、レジャー、サービス領域では実店舗の重要性が残る見通しです。
主な課題・リスクとしては、老朽化センターの対応、オンライン利便性との競争下での来館者維持、そして消費者信頼を損なう経済減速などが挙げられます。また、公共料金や人件費のコスト上昇によって小売業者の利益率が圧迫され、家賃支払い能力への影響も懸念されますが、多くはオムニチャネルモデルで順応しています。総じて、ポーランド小売不動産は健全さを維持し、経済成長が小売取扱高の増加に結びつく見通しです。今後の焦点はモールのエンターテインメントやホスピタリティ要素の導入による体験価値の向上と、進化する消費者習慣に合わせた戦略的なフォーマット開発(パーク、アウトレット、ミックスユースのハイストリートプロジェクトなど)になります。これらの調整が進めば、リテールセグメントは安定した利回りを享受し、REIT導入や国内投資家の参入拡大により、さらなる利回り圧縮も期待できるでしょう。
産業・物流:高需要と供給抑制――バランスの取れた見通し
記録的拡大のペースはやや鈍化: ポーランドの産業用・物流不動産は近年、驚異的な成長を遂げ、スター市場となっています。2024年第4四半期時点で、ポーランドの現代的倉庫・工業用在庫は約3450万㎡に達し、 [141] 前年比約9%増となりました。 [142](参考までに、5年前の在庫量の約2倍であり、Eコマースとニアショアリングがこのブームを牽引していることが分かります)。2024年だけで、デベロッパーが14地域で400万㎡超の新スペースを供給しました。 [143] この抜群のペースにより、ポーランドはヨーロッパ屈指の物流開発市場の一つとなり、2024年半ば時点で欧州第2位の純需要を誇るまでに成長しました(1位の市場に次ぐ)。 [144] これにより、大陸規模の倉庫ハブとしての地位が確立されたことが分かります。
需要の背景: この強さの背後にはいくつかの要因があります。ポーランドは中欧という戦略的立地にあり、比較的低い人件費、インフラ(道路・高速道路・鉄道)の改善が進んでいるため、EU市場向けの製造業・物流拠点として魅力を持っています。Eコマースの台頭(アマゾンやザランドなどの大規模フルフィルメントセンターがポーランドに立地)や、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)業務の成長も強い需要要因となっています。さらに、ニアショアリング傾向(西側企業が生産拠点をより近くの地域へ移す動き)もポーランドを後押ししています。とりわけ米中貿易摩擦などグローバルサプライチェーンの緊張が高まる中、多くの企業が拠点分散を模索する中で恩恵を受けています。 [145] 実際、国際企業(中国企業を含む)からポーランドでの新たな物流スペースの問い合わせが増えており、サプライチェーン再編の動きが現地当局によって報告されています。 [146]
堅調なリース活動と空室率のやや上昇: 工業用スペースへの需要は非常に堅調です。2024年のリース活動は約580万m²に達し、2023年比で約4%増加しました [147]。これはオキュパイヤー(利用者)による拡大が継続していることを示しています。特筆すべきは、2024年の取引量の約48%がリース更新だった点です [148]。これは既存テナントが大量に契約を更新していること=その立地への信頼の証ですが、一方で純粋な新規拡張分の割合が減少していることも意味します。それでも新規契約や拡張分は約300万m²に達しており、十分に健全です。空室率は2019〜2021年の超低水準(5%以下)から、供給拡大に伴いやや上昇。2024年末時点で全国平均で約7.5%でした [149](空室はおおよそ260〜300万m²)。2025年半ばには8.5%まで上昇 [150]。この増加は主に、新規供給が一時的に純吸収(ネットアブソープション)を上回ったためです。市場は急速にスペースを吸収しているものの、2022年〜2024年第1四半期に開発業者が大量に引き渡したことで一部エリアは空室が積み上がりました [151]。例えば、下シレジア(ヴロツワフ)地域は大型パークが同時多発的に開業し、空室率が高まっています [152]。
しかし空室率8%前後は依然として「均衡した市場」の指標です。テナントに選択肢を与える一方で、供給過剰にはなっていません。業界専門家はむしろ、この空室の上昇を過去数年の極端な逼迫からの健全な正常化(ノーマライゼーション)と見ています。「空室率の上昇は過去の投資ブームの自然な結果であり、市場は均衡に戻ろうとしている」とKnight Frankのアナリストは説明しています [153] [154]。空室増で、ここ数年で初めてテナント側の交渉力がわずかに上昇(地域によっては条件やインセンティブの上積みが可能になっている) [155] [156]。開発業者側もこれを受け、投機的建設を抑制。結果として空室率がさらに急上昇するのを防いでいます。実際、2024年末には新規着工が減り、建設中パイプラインも2021-22年ピーク比で大幅に減少。市場は「軟着陸」に向かっており、需要は3PL・小売・軽製造・データセンターなど幅広く強いままですが、供給増加は鈍化し、既存空室が今後数四半期で吸収されやすい環境になっています。
賃料の安定と「都市型」物流のプレミアム: コストインフレ(資材や人件費)、資金調達コスト上昇にもかかわらず、倉庫スペースの賃料は非常に安定しています。ポーランドの工業用賃料はEU内でも最も手頃で、これがテナントを惹きつける要因の一つです。2025年半ば時点で、主なハブのビッグボックス型物流賃料は標準的スペースで月額€3.80〜€5.00/m²(ポーランド中部やアッパーシレジアが安価、ワルシャワや都市型が高め) [157]。一方、「都市型」“ラストワンマイル”倉庫(都市周辺や市内の小規模区画)は月額€5.00〜€7.50/m²と高額で、立地便益が理由です [158]。過去1年でこれらの賃料水準はほとんど変化せず、上昇傾向にはありません。空室が増えても、家主は表面上の賃料自体は下げていませんが、長期契約ではインセンティブ増などで柔軟に対応しています。この安定が成熟したセクターであることの証で、家主・テナント双方が長期的関係構築を優先し、価格競争に走らないからです [159]。
また、新しいリース契約の多くはインフレ連動(通常は年次CPI調整)となっており、2022〜23年の高インフレ期には多くの家主が賃料収入の増加を享受しました。今後インフレが落ち着けば、賃料連動による上昇幅は鈍化し、賃料収入を増やすには入居率向上や、プライム立地での新規契約による賃料上昇が必要となります。
サステナビリティ(「グリーン倉庫」): 物流分野で顕著なトレンドは、持続可能で省エネルギーな倉庫への移行です。ポーランドの新規開発案件の多くはBREEAMやLEEDなどのグリーン認証基準取得物件で、太陽光パネル・LED照明・雨水利用・現地エネルギー蓄電などを装備しています。テナント・投資家双方に「グリーン認証」需要が強く、企業の脱炭素経営ニーズとも合致。Poland Insightの記事も「グリーン倉庫の急増」(タイトル通り)を指摘。大規模倉庫の屋上への太陽光発電設置や、EVトラック対応のインフラ統合なども一般化しつつあります。こうした動きがポーランドの現代的な倉庫群をさらに将来性の高いものに進化させますが、開発業者には初期投資負担も伴います(その分はやや高い賃料やテナント優先で回収)。
地理的分布: 物流の中核エリアは依然としてワルシャワ(中部ポーランド)、アッパーシレジア(カトヴィツェ地域)、ロワーシレジア(ヴロツワフ)、ポズナン、そして中部ポーランド(ウッチ地域)や西部ポーランド(シュチェチン、ドイツ市場向け)も拡大しつつあります。これらが3500万m²のストックの大半を占めます。今は東部ポーランドや地方都市にもハイウェイ網拡大とともに進出拡大(例:ジェシュフ、ルブリンなど)。近年はウクライナ国境近く(ジェシュフ付近)でも開発案件が増加し、ウクライナ将来復興需要やNATO軍事物流ニーズを見越した海外投資も始まっています。
投資マーケット: 物流不動産は投資家の人気分野で、ポーランドも例外ではありません。2024年には工業セクターが投資額の約25%を占めました [160]。2021年ほどの過熱はないものの、取引自体は継続。利回りは2022-23年に調整入りし、過去最低水準(4%未満)から2024年末時点で優良物流施設で約6.25%まで上昇 [161]。この修正とセクター自体の強さが、既存投資家・新規参入の双方の関心を再燃させています。4%利回りでは買わなかったグローバルファンドも、6%以上のキャップレートを持つポーランド倉庫に魅力を感じ始めています [162]。さらに、ポーランドは西欧主要国(利回り3.75〜5%)に比べ高スプレッドを維持し、コアプラス/バリューアッド投資の最有力ターゲットです [163]。
注目すべきは、セール・リースバック(所有施設の売却後リース利用)トレンドも拡大していることです。ポーランドの「2025年初めは過去最高のセール・リースバック取引が記録された」との市場レポート [164]。企業(オーナー)が高額化した不動産を売却し、長期リースで使用する一方、投資家は長期賃貸物件を喜んで取得しています。もう一点、国内ポーランド資本による工業取引の比率も直近で増加(2024年全体投資の約9% [165]、一部は工業用の私募ファンド・デベロッパー経由)。それでも大型取引は引き続き欧米・中東・南ア・アジア資本が優勢です。パナトニ、GLP、セグロなど開発業者が多数存在し、投資家向けの新築グレードA物件の供給パイプラインも多彩です。
見通し: ポーランドの産業・物流不動産の中期的な見通しは非常に良好ですが、急激な拡大から持続可能な成長にシフトしています。需要は引き続き高水準を維持する見込みです。ポーランド経済(特に製造業、小売業、Eコマース物流)は安定成長が見込まれ、倉庫スペースの継続的な需要を生み出します。地政学的状況は緊張していますが、企業がサプライチェーンをヨーロッパ市場に近い場所へ再構成する中で、ポーランドには安定したEU加盟と大規模な労働力という強みがあり、他の低コスト国に対して優位性を持ちます。供給は鈍化傾向にあり、開発業者は慎重になり、銀行も投機的な開発への融資基準を厳格化しています。しかし、これは健全な修正です。2025年の新規供給は2024年より低くなる可能性が高く、空室率がピークを迎え、2026年までに再び下降へ転じる可能性もあります。すでに2025年後半には、空室率が8–9%程度で横ばいとなり、その後吸収が進むことで改善が見込まれます。
賃料は、現在の空室在庫がリーシングされれば、主要立地で再び緩やかな上昇圧力がかかる可能性があります。多くの物流テナント(3PLの契約、流通センターを必要とする小売業者など)は差し迫ったニーズを持っており、特にワルシャワや他の主要都市周辺では、近接かつ即入居可能なスペースにプレミアムを支払うケースが多いでしょう。一方、空きが多い地方では賃料は競争的に推移します。
最大の不確定要素はウクライナ戦争の終結です。ウクライナ再建ブームが起これば、(後方基地として)東ポーランドの物流スペース需要が大きく増加する可能性がある一方、中長期的には一部ビジネスがウクライナ側へ移る可能性もあります。現時点では、ポーランドはウクライナやロシアに行っていた物流・製造活動の安全な受け皿として恩恵を受けています。
リスク要因としては、世界的あるいは欧州の景気後退により需要が減退する可能性もあります(現在、ポーランドの製造業は多様化されており、ニアショアリングの流れに部分的に守られています)。また、金利が高止まりすれば投資家主導型の開発は制限され、資金調達コストが上昇し続けますが、それは同時に既存資産の収益性価値を高めることも意味します。建設コストのインフレは課題でしたが、2022年以降やや緩和しています。ただし再高騰すればディベロッパーの利益率圧迫につながります。
まとめると、ポーランドの産業用不動産セクターは成熟段階に入っています。供給不足からバランスの取れた状態へと移行し、近代的なスペースが容易に利用可能となりました。安定した賃料、高い稼働率(空室8%でも大口ユニットはほぼ満室)、持続する需要要因が良好な状況を生み出しています。ポーランドは引き続きヨーロッパの物流拠点トップ3を維持し、2028年には総ストックが4000万〜5000万m²に近づく見込みで、開発もよりコントロールされたペースで進むでしょう。今後は開発期間の短いスペック型ビッグボックス(テナント需要に素早く対応)や老朽倉庫の価値向上リノベーション(自動化・ESG機能付加)が注目分野となります。これらトレンドとポーランドの競争力を踏まえ、産業用不動産は今後も投資家に安定したリターンをもたらし、経済成長を後押しし続けると予想されます。
土地市場:慎重な回復と計画制度改革
投資用土地市場 ― ブームから減速へ: ポーランドの開発用土地市場は近年アップダウンを経験しました。2021~2022年は安価な資金調達と住宅販売の好調を背景に、ディベロッパーによる土地確保ラッシュで活況を呈し、その後2023年は状況変化により急激に冷え込みました [166]。2024年には、政府の住宅支援策の不在、急騰する資金調達コスト、先行き不透明感から、多くの投資家やディベロッパーは「様子見」の姿勢を取りました [167]。銀行も土地購入融資の基準を厳格化し、非常に選択的な姿勢を取るようになりました [168]。この結果、取引件数は減少し、2023年は大型土地取引が比較的少なく、拡大計画も一時停止しました。
2025年に入り、土地市場のセンチメントは停滞から慎重な再活性化へと移行しつつあります。2025年前半は前年より成約件数が増加しましたが、購入者は契約前に徹底したデューデリジェンスやフィージビリティ分析を行っており [169]、投資家は戻ってきているものの、明確な「検証済み」需要と健全なファンダメンタルズを備えた案件のみに焦点を当てています [170]。需要の高い住宅開発(特に中価格帯住宅)、PRS(賃貸住宅)プロジェクト、都市型インフィル倉庫・物流施設、成長する地方都市の複合開発などに活用できる土地には関心が集まっています [171]。一方、明確な開発計画がなく、都市計画上の課題を抱える土地は、依然として敬遠されています。
取引量は2024年と比べて2025年に改善する見込みで、特に2025年後半から増えると予想されています [172]。専門家は2025年を「ポテンシャル再構築の年」と見ており、大型案件よりも着実な取引が主となりそうです [173]。2021年の土地争奪ブームのような過熱状態には戻らないでしょうが、より健全な取引水準となる見込みです。特筆すべきは、土地価格が暴落していない点で、立地条件の良い土地のオーナーは価格を維持し、値下げしてまで売却することを選んでいません。郊外立地ではやや緩和傾向が出るかもしれませんが、都市部の開発用地は依然高値が続いています。また、ポーランドの土地コストはCEE地域では競争力があり、この点が海外ディベロッパー誘致の要因の一つとなっています [174]。
投資家層と海外勢の動向: 土地市場の買主構成も変化してきました。2025年は現地ポーランド系ディベロッパー・投資家(特に未上場系)が活発で、現場感覚や迅速な意思決定力を活かしています [175]。また、「ご近所取引」とも呼ばれる動きがあり、近隣諸国(チェコ、ドイツ、バルト3国)からの投資家がポーランド土地取引に参加するケースが目立ちます [176]。こうした地域プレイヤーは市場理解があり、ときに現地企業とJVを組む場合もあります。西欧系の大手機関投資家は依然慎重で、経済的シグナルが明確になるまで本格参入を見送っています [177]。
同時に、新たな海外参入も見られます。トルコ系・地中海系投資家は、小型土地の獲得に乗り出し、安全性の高いプロジェクトなら競争力ある価格で積極参入しています [178]。さらに前述の通り、中国企業は世界貿易構造の変化に伴い物流用地への関心を示しています [179]。これはアジアから製造・物流拠点が移転する際のポーランドの安定経済と地理的優位性と合致しています [180] [181]。一方、南アフリカ系やその他グローバルファンドは完成案件投資が主で、土地自体を直接購入するケースは少なく、むしろ完成資産の買い取りや、開発中土地へのフォワードファンディング(資金先出し)という形でプロジェクトパイプライン確保に動いています。
一つのポジティブな動きとして、ポーランドの民間資本が土地への投資のために集結しつつあります。例えば、アドバイザリー会社のWalter Herzは、個人投資家から5,000万ズウォティ超を集め、ワルシャワ、ポズナン、トリシティでの土地取得に投資しています [182]。これは、土地バンキングに対する地元の高額資産家による関心と成熟度の高まりを示しており、大手機関投資家が活動を控える中で彼らが参入しています。
土地利用と需要の高い分野: 特に需要が高い土地種別はいくつかあります:
- 住宅建設用地: 住宅不足や住宅販売の回復が見込まれる中、新築住宅用の好立地の区画(とくに主要都市の郊外や急成長する衛星都市)は非常に求められています [183]。デベロッパーは過剰な価格を避ける一方、土地バンクを補充し、市場が本格回復した際に備えています。
- PRS(建設して貸す)プロジェクト用地: 機関投資家系の賃貸住宅デベロッパー(ポーランド国内外問わず)は、大都市で賃貸用のアパートメントコンプレックスを建設するための用地を探しています [184]。オフィス用途や複合用途の土地を住居/PRSプロジェクトへ転用するケースもあり、このセグメントは急成長中です。
- 都市型物流用地: ECやラストマイル配送の拡大とともに、市中心部近くの小型倉庫の需要が高まっています。投資家は、都市周辺や大都市圏内の工業地域にある土地に着目し、“アーバンロジスティクス”用施設を計画しています [185]。このような土地は供給が限られているため、競争が激しくなることも珍しくありません。
- 複合用途・オフィスの再開発用地: 一部の中心市街地では、老朽化した工業・商業用地を、オフィスや小売、住宅を組み合わせた複合開発に再開発できる場所があります。こうした土地に着目し、クラクフ、ヴロツワフ、ウッチなどの都心再開発を狙う投資家もいます。
- 用途変更ポテンシャルのある農地: 興味深いことに、ポーランドでは農地の投資家からの関心が高まっています。都市化圧力の強い地域(ワルシャワ、クラクフ、ヴロツワフ周辺など)には、今後住宅や工業用途に転用される可能性のある農地が存在します。そうしたプロセスを乗り越える覚悟のある投資家が長期目線でこうした区画を取得しています [186]。ポーランドの農地価格は近年上昇傾向にあり、特に2016年のEU加盟後(移行期間終了で欧州市民の自由取得が可能となった)に一層上がりました。それでも西欧諸国よりはまだ割安で、用途変更できればさらに値上がりが期待できます。
主要課題 ― 計画と規制: おそらくポーランドの土地市場最大の障害は都市計画システムです。ポーランド全土のわずか30~40%しか有効な地方空間開発計画(MPZP)がカバーしていません [187]。その他の土地は個別にゾーニングの判断(WZ:開発条件決定)を求められ、これは遅く、予測困難で恣意的なこともしばしばです [188]。投資家はゾーニング承認に長期間待たされるケースが多く、当局が決定を出さないことでプロジェクトが停滞する場合もあります [189]。 政府は自治体向け「ジェネラルプラン」の導入など抜本的改革に取り組んでいますが、今のところ延期が続き、期限変更も重なって混乱を招いています [190]。結果として空間計画における立法的混乱が生じており、これは透明で効率的な土地開発の大きな妨げとなっています [191]。
この現状を受けて、政策担当者は改革案を検討中です。一つのアイディアは規制緩和による手続き簡素化で、例えば計画許可申請の電子化や簡易化などが挙げられます [192]。一例として、現状では影響が小さいサービス建物や倉庫にも求められるフルな環境影響評価決定を、省略または簡素化する案が浮上しています。現行では実質影響が最小限でも許可取得に数ヶ月以上かかっています [193]。「低影響」投資案件のリストを作り、その場合は環境許可段階を簡素化または省略できるようにする提案です [194]。さらに全国的に土地・不動産登記簿のデジタル化も予定されており、これが進めばデューデリや取引が迅速化します [195]。
もう一つの具体的な規制課題は農地の用途変更です。ポーランドでは農地の品質等級によって分類されており、高品質農地を開発用地に転用するには大臣承認が必要で、これは取得が難しい現状です。農地のうち下位等級(クラスIVやV)に限り省庁承認なしで自動的に農業目的から除外できる明確なルールを設ける案が議論されています [196]。 これにより都市周辺の開発余地のある土地が増える可能性があります。これらの郊外の多くは形式上「農地」ですが、生産性は高くありません。
まとめると、計画制度改革が決定的に重要です。投資家は一貫して、より予測可能で迅速なゾーニング承認が土地取引拡大に不可欠だと述べています [197]。 政府もこの方向で動いているものの、進展は遅い状況です。改善が実現するまでの間は、既にゾーニング済みまたは許可取得の見込みが高い区画に取引が集中するでしょう。
見通し: 2025~2027年のポーランド投資用地市場は、段階的ながら上昇トレンドに向かうと見られます。金利が徐々に低下し続ければ、土地購入や開発の資金調達が容易となり、買い手が増えてくるでしょう。好立地(例:ワルシャワ中心部や主要住宅地)の土地価格は希少性から維持もしくは上昇が見込まれます。逆に二次立地では明確な需要回復がない限り相場は横ばいでしょう。2025年後半から2026年にかけて、デベロッパーが次の建設サイクルに備えて質の高い土地をめぐる競争が激化し、一等地では価格圧力が高まりそうです。
マクロ環境が安定すれば、外国人投資家のポーランド土地への関心も高まるはずです。2023~24年に取得を停止していた大手機関投資家も、ポーランド経済が年3%近い成長を続け、不動産サイクルが好転すれば再参入する可能性があります。EU予算によるインフラ等への資金流入(ポーランドはEU予算の恩恵国)も、さらなる開発ポテンシャルを広げます(例えば、道路整備で物流拠点が有望化する等)。
主なリスクと変動要素: 最大のリスクは引き続き規制の状況です。計画制度改革が頓挫したり、不動産関連法に政治的不安定が生じたりすると、投資家心理を冷やします。また、政府が外国人の土地取得に厳しい制限を課す可能性(現時点では、ポーランドは既に主要な制限を緩和済みのため、可能性は低い)も影響を及ぼしかねません。もう一つは建設コストです。コスト急騰は、プロジェクト全体の採算性を悪化させ、結果的にデベロッパーが土地に支払える価格を引き下げてしまいます。現時点では建設費は安定しており、土地価格にとってはポジティブ要因です。
結論として、2025年のポーランドの土地市場は慎重さと選択性が特徴です。どの区画でも投機的に購入する時代は終わり、今では明確な可能性を持つ厳選された用地が重視されています。今年は、一部の分析が表現するように「ポテンシャルの再構築」の年として位置付けられており、今後数年間のより活発な活動への基盤が形成されています。計画政策の改善や経済的追い風によって、現在未利用の多くの土地が開発のために解放される可能性があり、住宅不足や物流ネットワーク拡大といったニーズへの対応が期待されます。投資家は土地を長期的に資本の安全な避難先(成長する国における実体資産)として捉えており、今から開発サイクルが加速する際の恩恵を享受しようとポジショニングしています。
外国人投資家と規制要因
外国資本はポーランドの不動産セクター全体で支配的な役割を果たしており、チャンスと配慮事項の双方をもたらしています。商業投資の側面では、国際ファンドが大口取引を牽引してきました。前述の通り、2024年には外国人投資家が50億ユーロ超のCRE投資総額の約90%以上を占めました。こうした投資家には、欧州・北米・アジア・南アフリカのグローバルPEファンド、保険ファンド、年金ファンド、専門不動産投資家が含まれます。ポーランドの魅力は明確で、スケール(人口3,800万人の大経済圏)、成長(西欧を上回るGDP・消費者成長率)、そして明らかに高い利回りにあります。ポーランドの主要オフィス・商業・物流不動産の利回りは6〜7%で、西欧市場の3〜4%と比較すると大きなスプレッドとなります。この利回り差は新興市場リスクおよび為替リスクを補うものですが、ポーランド通貨(ズウォティ)は比較的安定しており、同国はEUにも統合されています。
国別で見ると、近年ではドイツ、アメリカ、イギリス、南アフリカの投資家がトップバイヤーでした。南アフリカのREIT(NEPIロックキャッスルやRedefineなど)は、それぞれ商業施設やオフィス分野で特に活発でした。米国やカナダの投資家も2024年に再び参入しています。2024年の資本供給元内訳を見ると、南アフリカ(取引額の19%)、米国(11%)、イギリス(13%)、西欧(ドイツ/UKを除く9%)、CEE近隣諸国(18%)、そしてポーランド国内が約9%と多様です。この多様性は、ポーランドが世界中の投資家のレーダーに載っていることを示しています。さらに新規参入も続いており、例えば英国のSona Asset Managementが2024年に大規模オフィスポートフォリオ取引で参入し、中東資本も物流ポートフォリオを物色しているとの噂もあります。
なぜ地元投資家は少ないのか? 国内資本の割合が比較的低い(2024年は約9%のみ)のは、主に構造的な理由によるものです。ポーランドには十分に発達したREITや同様の投資信託制度が存在せず、そのため地元の機関投資家資金(年金基金など)は伝統的に不動産に流れ込みませんでした。大規模な取引ができるポーランドの主要な不動産投資家(国が支持するPFRや一部の保険会社など)はごくわずかです。ただしこの状況は徐々に変化しており、より多くのポーランド人富裕層やPEが不動産に注目し始めていますが、現状では外国資本がギャップを埋めています。前述の通り、REIT法制の導入(何年も審議中)はゲームチェンジャーとなり、中小投資家も間接的に不動産投資ができるようになって地元参加が拡大すると期待されています。業界専門家は、たとえば隣国チェコでのREIT成功事例を挙げ、繰り返し導入を提言しています。
外国人投資家向けの規制環境: 一般的にポーランドは外国人による不動産所有にかなり開放的です。EU加盟以降、EU市民や企業はポーランドの不動産(土地も含む)を制限なく購入できます(移行期間中の農地など一部例外を除く、2016年に終了)。非EU外国人も購入可能ですが、特定の不動産(特に農地/森林など)は内務省の許可が必要です。この許可手続きは多くの場合形式的なものであり、戦略的な土地買い占めを防ぐためのものです。一方で都市型不動産(オフィス・住宅・倉庫など)については、信頼できる国際的な買主に障害はほとんどありません。ポーランドの権利登録(土地・抵当権登記簿システム)は明確で、所有権も法的に保護されており、外国人投資家に評価されています。
規制面での懸念点の一つは課税です。ポーランドの不動産課税は、(資産取引の場合)1%の譲渡税と、m²あたり定率で比較的低い固定資産税が存在します。日本や他国のような毎年の資産課税(ウェルス税)はありません。しかし、政府は複数の住宅ユニットを所有する家主に対する追加課税(投機抑制目的)などの案を浮上させています。2025年時点で具体的な法制化はありませんが、投資家はこうした提案を注視しています。もう一つの流れとしてESG対応があります。EUの規制(エネルギー効率指令など)により、基準を満たさないビルは資産価値が低下する可能性があります。外国人投資家の多くはESG意識が高いため、グリーン認証資産を好む傾向があり、結果として投資を呼び込む不動産の種類にも影響を与えています。低効率物件は改修が必要となるか、今後敬遠される可能性があります。
住宅市場における外国人: 機関投資家以外にも、ポーランドではラグジュアリー住宅やセカンドハウス(たとえば前述のウクライナ人や、クラクフや沿岸部で物件を購入する一部外国籍居住者など)への個人外国人バイヤーの存在も見られます。政府は一時、他国のような外国人購入制限(市場冷却策)を検討しましたが、外国人が住宅取引全体に占める割合が依然として小さいため(特定プロジェクトで30%に跳ね上がる例はあるが、それは国際機関近くや一部移住者向け等限定的なケース)、実施には至っていません。
海外投資: なお、ポーランド投資家自体も海外(ファンドを通じた西欧倉庫購入など)で積極的になっていますが、本レポートの範囲外です。REITが導入されれば、ポーランド資本の海外不動産投資も促進される可能性があります。
まとめると、外国人投資家の参画はポーランド不動産市場に不可欠であり、専門性と流動性をもたらしています。規制環境も総じて好意的で、権利保護が強く、所有に関する大きな障壁もありません。業界から要望される主な改善点—たとえば計画プロセスの簡素化やREIT導入—は透明性と資金流入を高め、外国人・国内双方に利益をもたらすでしょう。予想外に保護主義的な方向へ転換しない限り(現政権はビジネス寄りのためその可能性は低いとみられる)、ポーランドは今後も世界の不動産投資に開かれた魅力的な市場であり続けるでしょう。
3~5年の予測と展望(2025~2030年)
今後を見据えると、ポーランドの不動産市場は今後数年にわたり、強力な経済基盤と前述の各セクターのトレンドに支えられて、着実かつ持続的な成長が期待されています。ここでは、主要要素および不動産タイプ別の展望をまとめます。
マクロ経済・金融見通し: エコノミストは、ポーランドのGDP成長率が2025~2027年に年平均3~4%になると予測しており、EU全体を上回ると見込まれます。個人消費が引き続き成長を牽引し、賃金上昇やEU資金の本格導入によってさらに勢いがつくでしょう。インフレ率は2022年には2桁まで上昇しましたが、2025年には約4%、2026年には約3%に正常化する見通しです。実際、ポーランド国立銀行(NBP)の調査では2025年の平均インフレ率が4.1%、2026年が3.2%とされています。このインフレ沈静化を受けて、NBPの追加利下げが期待されます。予測によると政策金利は2025年末までにさらに約75~125ベーシスポイント下がり(約4.0~4.5%)、2026年末には約3.5~4.0%になる可能性があります(新たなインフレショックがなければ)。低金利は、不動産にとっては住宅ローン負担軽減・商業開発融資の向上・不動産利回りの縮小(=資産価値の上昇)といった恩恵につながるでしょう。失業率も引き続き非常に低水準(3~5%)と見込まれ、近隣諸国からの労働力流入による労働供給拡大も期待されています。リスク要因としては、世界経済の動向—とくにEU主要取引相手国が停滞した場合、輸出産業が鈍化する恐れもありますが、現時点のコンセンサスではEUも緩やかな成長を維持する見通しであり、ポーランド経済も支えられると考えられます。
住宅の予測:今後3~5年間で、ポーランドの住宅不動産価格は緩やかに上昇すると予想しています。この上昇はおおむね所得増加とインフレ率に連動し、年率で一桁前半~中盤(例:年3~6%)の上昇が見込まれます。したがって、インフレ調整後(実質)では、住宅価格は全体として安定するか、わずかな実質的上昇となるでしょう。主な要因としては、深刻な住宅不足が引き続き解消されないことが挙げられます。近年建設件数が記録的であっても、ポーランドの人口1,000人あたりの住宅戸数は欧州でも依然として最低水準です [198]。また、人口は移民の増加(特にウクライナからの定住者)によって再び増加傾向にあり、今後は人口動態も追い風となります。さらに、2026~2027年までには現在減速している住宅着工(2023~24年に多くのプロジェクトが一時停止)の影響で、新規供給が減少し、需給がさらに引き締まり価格が下落しない構図が続くと考えられます。
住宅ローンの利用条件は利下げとともに改善し、2022年の急激な利上げショック後にゆるやかに与信緩和が進む見通しです。政府支援策(「First Keys」など)も2025年以降に一部の購入者層(中古住宅の初回購入者など)を後押しし、市場に適度な刺激を与えつつ加熱は防ぐでしょう。賃貸の需要も依然として強く、都市化やライフスタイル変化で賃貸世帯が増えるため、賃料は今後も緩やかな上昇(年2~5%程度)を維持しそうです。ポーランドのPRS(賃貸住宅事業)も大きく拡大し、現在約21,000戸から2030年までに5万戸超になる可能性があります。これにより賃貸市場の専門化と供給増が進みますが、依然として供給不足のため賃料が下がることはなく、むしろ新たな需要を吸収する形になります。
注意点として、もし金利が急激に下がったり、過度な補助金制度が復活した場合は、再び価格が急騰するリスクもあります。しかし政策担当者はそうした変動を避ける意向です [199]。基本シナリオとしては、安定した成長路線です。あるデベロッパーは「2023年初頭の価格水準まで戻ることはないが、今後はインフレ近くの緩やかな成長」と予測しています [200]。2028年ごろまでには、エネルギー効率の高い「グリーン」住宅(EU規制による)、コスト削減のためのプレハブ建築の活用、そして欧州に現れ始めたインスティテューショナルビルダー(一戸建ての賃貸団地を丸ごと建設する企業)など、住宅セクターに新しい動きが加わる可能性があります。人口動態や買いやすさの改善で、住宅市場は今後も市場の柱となり、大きな暴落リスクはないでしょう。
オフィスの予測:今後数年のオフィス市場では、量より質が重視されます。新規供給は2026年までは限定的にとどまり [201]、今後はプライム立地(都心など)の空室率が徐々に低下します。2025~2027年には、ワルシャワCBDの一等地で空室率5%以下の事実上の満室水準に達し、一部のテナントは郊外や非中心部に流れるでしょう。しかし非中心部では古いオフィスが残るため、空室率は当面高止まりする見込みです。地方都市でも市況に差が出てきており、クラクフやトリシティなど有力市場は好調なら空室率10%以下まで低下、弱い市場は10%台を維持するでしょう。
デベロッパーは特にワルシャワで2026年までに新規プロジェクトを再開する可能性が高まります。2025年後半にはオフィスタワー建設の新たな波が始まり、2027~2028年の需要拡大を見越した供給増に備えるでしょう。資金調達コストが下がれば一層後押しされます。また、再開発プロジェクトも実現し、老朽化したオフィスビルは住宅やホテルなどに転用されます。これにより、二次立地でのオフィスストックは減少しますが、例えばワルシャワのイェロゾリムスキェ通り近辺の老朽物件がマンションや学生寮になるケースなど、別のニーズにも対応します。
プライムロケーションのオフィス賃料は、今後3年間で累計5~15%上昇も見込まれます。特に最新のグリーンビル(環境配慮型)の高層階は供給が限られ需要大のためです。テナントは、従業員満足やESG(環境・社会・ガバナンス)目標達成が期待できる高品質なビルにはプレミア価格を払う傾向です。一方、古いビルの賃料は、アップグレードしない限り横ばい~下落も。従って、クラスA+とBの賃料格差は一層拡大します。また、プライムビルの賃貸インセンティブ(フリーレント等)は短期化し、オーナーの交渉力が強まることで実質賃料も上昇します。
ハイブリッド勤務などのトレンドもオフィスの使い方に影響し続けるでしょう。企業はデスクごとのスペース(コラボレーションエリア等)を拡充し、出社率低下を前提にしつつも、企業文化や顧客応対のために一定の床面積を維持すると予想されます。よって、従業員一人当たりの面積が減る一方で、ポーランドにおけるIT、BPO、R&D拠点等のビジネス拡大が年間純増吸収を支えるでしょう。ポーランドの人材力・コスト競争力は、多国籍企業の新設を今後も牽引します(特にクラクフ、ヴロツワフ等が著名サービス拠点)。
オフィス投資も再び活発化する可能性が高いです。金利低下のシナリオ下では、現在約6.0%のプライムオフィス利回り [202] が2026年までに5%前半まで低下し、資産価値が回復しそうです。また、アジアの政府系ファンドや中東投資家など、新規参入の可能性も。リスク要因としては世界的なオフィスセクターへの不透明感ですが、ポーランドの場合はストックが新しく、IT・サービス分野への集中度が高いため相対的に有利です。オーナー側が柔軟に適応(フレックス空間の導入、アメニティ・ESG対応)を続ける限り、ポーランドのオフィス市場は引き続き有望と言えるでしょう。
リテールの予測:ポーランドのリテール市場は成熟しており、大型のショッピングセンターの新規開発はほぼ見込まれません。今後数年は、既存物件の改装・最適化といった動きが主流です。多くのモールがリノベーションを受け、老朽化したり業績不振のモールはオフィス・住宅・物流拠点等への用途変更も進むでしょう。リテールパークやコンビニエンス型センターは引き続き成長が見込まれ、とくに地方中小都市での需要が続きます。近代的なリテールが未整備な町では、食料品スーパー併設型の新規プロジェクトの余地も残っています。
消費支出も、記載の通りインフレ安定後は拡大が期待されます。2025~2026年にインフレ率が3~4%、賃金上昇が7~10%程度となれば、実質所得が増え、リテール消費も増加します。これによりモールの販売効率が上昇し、一等地でのテナント賃料も歩率賃料や契約更新を通じて上がる可能性があります。一方、EC(電子商取引)比率も2030年には小売全体の約15%程度に到達する見込みで、実店舗も常に進化して存在感を維持する必要があります(モール内のEC連動受取施設やショールーミング型店舗などの導入など)。
また、同期間中にREIT制度が本格導入されれば、リテール特化型のREITが二次資産を取得・再投資する流れが活性化する可能性があります。これにより一部海外オーナーの出口となり、地元資本注入も促されます。
リテール利回り(現在プライムで約6.25% [203])も、投資家マインドが回復すれば2027年までに5.5~6.0%前後まで低下(価格上昇)が可能です。二次的リテールでは、最良の近隣型やアウトレットは買い手がつきやすい一方で、三次的なモールは買い手が見つかりづらく、高利回りで放置されるか再開発される可能性が高いです。
インダストリアル/物流の予測:ポーランドの物流セクターは今後も高い成長を維持しそうです。年間500万~600万㎡の賃貸需要がしばらく続く見込みで、これは国内ECの更なる拡大余地や、自動車・エレクトロニクスなど製造業の現地生産投資によって支えられています。空室率は2025年まで一桁後半で横ばいが続くかもしれませんが、2024~25年の新規着工減速が寄与し、2026年以降は低下し始めるでしょう。2027年には空室が再び約5%以下に正常化し、これは実質的な満室(摩擦的空室のみ)を示します。こうした中で再び賃料上昇圧力が高まり、特に都市内物流(ワルシャワ等のラストワンマイル倉庫)は土地不足・旺盛な需要から㎡単価が今後€5~6超、場合によっては€7~8にも達する可能性があります。中心地の大型倉庫も、土地・建設コストの上昇次第で賃料が上がるでしょう。
また、ポーランドはウクライナ復興が始まればその物流拠点となる可能性があり(時期は不透明)、国境エリアに新たな倉庫需要が生まれるかもしれません。さらに、サプライチェーンの地域分散化が進めば、電池ギガファクトリーや部品生産など新産業の進出も期待でき、これらが新たな工業系施設需要を生みます。
物流開発は、2020~2022年の投機的な過熱期から一転し、今後はよりビルド・トゥ・スーツ(一部内定賃貸)や段階的開発が中心となります。開発会社の多くは、大型パークを建てる前にテナントを一部確保する方式にシフトしています。また、環境配慮の観点も強まり、EUの気候政策により太陽光発電型倉庫やゼロカーボン建設、特定保護区域での新規造成抑制といった方針も加速します。ただし、ポーランド国内には物流用地が十分にあり、ブラウンフィールドや既存工場跡地の再利用も可能です。
産業投資は、今後も最も注目される分野であり続けるでしょう。プライム・ロジスティクスにおいては、2027年までに利回り圧縮が約6.25%からおそらく5.5%、あるいは5%まで進むと予想されます。これは、安定資産をめぐる競争が再び激化する(2022年以前のトレンドに類似)ためです。金利が下がり、経済が安定すれば、グローバル投資家がプライムポートフォリオを争奪する競売が起こる可能性もあります。その頃にはポーランドの欧州における物流の中核マーケットとしての地位がより一層確立され、多くの汎欧州ファンドが「コア・ポートフォリオ」とみなすようになるかもしれません(一部はすでにそう扱っています)。
土地と開発:主要都市エリアの土地価格は、デベロッパーが市場に再参入するにつれて上昇するでしょう。2026年頃、金利が約4%で経済が安定していると仮定すれば、住宅デベロッパーは建設開始件数を再拡大し、需要回復に応える動きを強めると予想されます。2025~2026年には良質な用地を積極的に探し、競争の激化が予想されます。同様に、物流デベロッパーも幹線道路沿いや都市周辺での土地取得を続けますが、秩序ある進め方となるでしょう。農地の価値も、農産物市況や都市拡大による用途転換の可能性から上昇余地があります。
もしポーランド政府の都市計画簡素化策が完全に実施されれば、開発ポテンシャルを大きく解放する可能性があります。2025~26年までに多くの自治体が新しい「ジェネラルプラン」と許認可のデジタル化を導入すれば、プロジェクトの進行が加速し透明性も増すでしょう(不確実性の低減は土地価値を高めます)。また、低影響プロジェクトの迅速化や農地転用ルール緩和などの規制緩和 [204] [205]が進めば、さらに多くの土地が実質的に開発可能となり、市場に一層の追い風となります。逆に、官僚的手続きが依然として障害であれば、開発の速度が制限され、開発可能な土地の価格が高止まりすることになります(これは成長が一部に集中してしまうため、理想的なシナリオではありません)。
見通しのリスク:全体として前向きな見通しですが、軌道修正を余儀なくするリスクも存在します。
- 景気後退:世界的なリセッション、あるいはポーランド最大の貿易相手国ドイツで急減速が起きれば、商業スペース需要が減退し失業率も上昇、住宅需要に打撃となり得ます。ただし、ポーランドはこれまでの強さを見せており、緩やかなリセッションなら管理可能と見られます。
- 金利サプライズ:もしインフレがしつこく、中央銀行が方針転換で再び利上げを行うなら、資金調達や投資家の動きが鈍化します。現在のところ、インフレは沈静化しポーランド国立銀行(NBP)は緩和サイクル中であるため [206]、このリスクは限定的ですが、エネルギーショック等でインフレ見通しが変わる可能性もあります。
- 地政学的緊張:ウクライナでの戦争は背景リスクであり、何らかの激化や波及が起これば、センチメントや経済の安定性を著しく損なう可能性があります(ただし、難民受け入れやロシア/ベラルーシからのビジネス移転で経済的にプラスの側面もあり)。また、2023年末から発足した新政権が何らかの政策変化をもたらすかもしれませんが、現連立与党は親EU・投資推進志向であり、大きな方針転換は想定されません。
- セクター固有の変化:オフィス市場では、リモートワークの普及が加速したり、企業が大幅にオフィス面積を減らす(AIや自動化による事務職減少など)がリスクとなります。リテール市場では、消費者行動の予想以上の変化(例:Eコマース比率が想定外のペースで30%に跳ね上がる等。ただし文化要因から急劇な変化は考えにくい)がリスクです。産業系では、全てのデベロッパーが強気になり一斉に開発を拡大すると過剰供給の懸念もありますが、現状の空室率増加から学ぶことで、それは抑制されると見込まれます。
これらのリスクはありつつも、専門家の予測は概ね楽観的なままです。例えば、最近のNBP(ポーランド国立銀行)による不動産関係者アンケートでは、住宅価格の安定と漸進的な上昇、投資市場の動的回復(金利低下時)が期待されていることが示されました [207] [208]。2020年代前半のような不安定な変動は繰り返さず、より穏やかで持続的な成長路線に移行していくとの見方が主流です。
結論:2028年までに、ポーランドの不動産市場は近代化・サステナブルな建物、機関投資家(国内勢含む)の参入増、ほとんどの分野での需給バランスのとれた状況が特徴となる展望です。住宅市場では数十万戸が新規供給される見込みですが、それでもなお十分な需要が残り(デベロッパーは忙しさが続く)、オフィスはよりスマートで環境配慮型となり、旧ストックはリパーパスされ新超高層ビル(特にワルシャワ、350mのヴァルソ・タワーなど)が都市景観を一新することでしょう。リテールはさらに体験型へと変化し、もし法整備が進めばアメリカ型REIT(投資信託)によるモールやスーパー群の保有が実現するかもしれません。物流分野は欧州分配拠点としてのポーランドの役割をさらに深め、データセンター・キャンパス等の新分野へ拡張する動きも始まりました(これも産業用地の需要増につながります)。
要するに、ポーランド不動産市場は「成熟を伴った成長」が期待されています。強固な経済基盤、改善する規制環境、魅力あるリターンという絶妙な組み合わせが、引き続き投資と開発を引き寄せるでしょう。あるマーケットアウトルックでは次のように端的に表現されています:「ポーランド不動産市場は堅調であり、安定した実需と投資回復の勢いが確認される。2025年が進行する中でも、強い市場ファンダメンタルズと楽観的見通しが支えている」 [209]。大きなショックがなければ、今後3~5年でポーランドの不動産各分野は着実に前進し、投資家に多様なチャンスを提供しつつ、企業や住民の多様化するニーズにも応えていくと期待されます。
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