- アイスランドは全島で光ファイバー網を整備し、FTTHは標準、固定ブロードバンドの約88.7%を占め、住宅の93%以上がギガビット級光回線にアクセス可能で、最低でも1Gbpsのダウンロードが全住民に提供され、ほとんどの地域で10Gbpsサービスも普及している。
- 国際海底ケーブルはFARICE-1、DANICE、Greenland Connect、2023年に新設されたIRISを含む4本で、総国際帯域容量は2023年時点で208.8 Tbpsに達する。
- モバイル網はSíminn、Vodafone Iceland(Sýn)、Novaの3大事業者が競合し、4G/5Gは全国対応、Novaは2020年に初の5Gを開始し、2021年には SíminnとVodafoneも追随した。
- 2022年時点のアクティブ携帯契約は52.1万超、人口約370万人に対して普及率は約141%で、データ専用の4G/5G契約6.4万件も存在する。
- 主要ISPの市場シェアは Síminn 45.4%、Vodafone(Sýn)24.2%、Nova 17.9%、Hringduなどを含む合計でその他2.4%だった。
- Islând Ljóstengt プログラムは2016–2022で約5,500カ所の農村にFTTHを導入し、2022年にはADSL利用が全体の1.3%・約1,800軒にまで低下した; さらに政府は2024年、新たに2026年までに全住宅・事業所の100%光回線化を目標とした。
- 価格面では自宅インターネットの標準プランは月額約5,000–6,000ISKで100Mbps前後が含まれ、ギガビット最高プランは約10,000ISKを超える。
- Starlinkは2023年2月にアイスランドで利用可能となり、山岳地帯や遠隔農場・船舶などで150–200Mbpsの速度を報告し、遅延は60–70ms程度、災害時のバックアップ回線として期待される。
- 2023年開通のIRIS海底ケーブルで欧州への第三経路を確保し、Greenland Connectで北米と直結、Verne GlobalやatNorthなど大型データセンターの進出により北欧データハブとしての地位を高めている。
- 国内トラフィックはRIXで内部完結、CERT-ISがサイバーセキュリティに一元対応し、EU/EEAの規制に準拠する形でネット中立性・ローミング・データプライバシーを維持している。
アイスランドは北大西洋の小さくて孤立した島かもしれませんが、世界でも有数の先進的なインターネット・エコシステムを誇っています。ほぼ全人口がインターネットを利用しており、アイスランド人の99%以上がインターネットを使用しています [1]。さらに、地球上で最速クラスの接続環境も享受しています。本記事では、超高速光ファイバー網から広範なモバイルカバレッジまで、アイスランドのインターネットインフラを徹底解説。主要プロバイダー、通信速度、アクセシビリティ、政府の取り組み、衛星回線の選択肢、世界的および北欧との比較も詳しく紹介します。
アイスランドのインターネットインフラ概要
ブロードバンドと光ファイバーバックボーン: アイスランドでは、国全体で積極的に光ファイバーブロードバンドの整備が進められてきました。全戸向け光回線(FTTH)は現在標準であり、全固定ブロードバンド回線の約88.7%を占めています [2]。その結果、アイスランドの住宅の93%以上がギガビット級光回線にアクセス可能 [3] [4]。実際には、最低でも 1Gbpsのダウンロード速度が全住民に提供され、ほとんどの地域で10Gbpsのサービスも行われています [5]。この広がる光ファイバー網により、アイスランドは欧州での光化率トップに躍進。2020年にはヨーロッパでFTTP(光ファイバー宅内引き込み)普及率1位の国となりました [6]。バックボーン網(主にMílaとLjósleiðarinnが運用)は全島のコミュニティを結び、離れた町でも大容量リンクで接続されています。国際的にも、アイスランドはヨーロッパや北アメリカと4本の海底光ファイバーケーブルで接続されており、2023年時点で総国際帯域容量は208.8Tbit/sに達します [7] [8]。(参考までに、アイスランドの実際の使用は現在そのごく一部=約3Tbit/sであり、今後の拡張余地は膨大です [9]。)これらの海底ケーブル(FARICE-1、DANICE、Greenland Connect、2023年新設のIRISケーブル(アイルランド行き)など)は冗長性と世界最速級のトランジットを提供し、これに惹かれてデータセンターも進出しています [10]。
図: 全国通信データベースによるアイスランドの光ファイバー網(幹線ルート)の地図 [11]。実質全ての有人エリアがバックボーン網で結ばれ、全国規模の高速ブロードバンドを可能にしています。
モバイルネットワーク(4G/5G): アイスランドのモバイルインフラも極めて堅牢です。3大事業者(Síminn、Vodafone Iceland(Sýn)、Nova)が音声・データサービスを競合しながら提供。3G/4Gはすでに全国対応、5Gの導入も早く、2020年にNovaが初の5Gを開始、2021年にはSíminnとVodafoneも続き急速に展開が進みました [12]。現在、4Gと5Gのカバレッジは人口集中地域で広範囲 [13]。3社とも沿岸部(人口の多くが居住)で強力なエリアを確保しており、沿岸部はほぼすべて4G/5Gでカバーし、高地の無人地帯ではやや信号が弱くなります。人口の大多数が沿岸都市部に住むため、オペレーターは人口カバー率99%以上を達成できており、中央高地の受信不能地帯があっても支障ありません [14]。旧世代ネットワーク(2G/3G)は2025年までに終了予定で、今後は完全に4G/5Gに集中します [15]。アイスランドのモバイル通信速度は世界最速級で、中央値のモバイルダウンロードは約214Mbps、モバイルデータ速度の世界トップ10に入ります [16]。5G拡張で平均帯域幅も今後さらに向上します。2022年時点で、アクティブな携帯契約は52.1万超(人口約37万人)で、複数端末所有やデータ専用SIM利用が多いです [17]。さらにデータ専用の4G/5G契約6.4万がPCやタブレット、IoT、自宅回線代替(別荘や遠隔地など)で使われます [18]。人口比で約141%の普及率は、無線通信のアクセスのしやすさを強調しています [19]。
農村接続: 最も遠隔な農場や村への接続も重要視されています。主要都市部にはすでに光ファイバーが敷設されていますが、一部の小規模集落や孤立地は当初VDSLやそれ以前のADSLに頼るしかありませんでした。こうした格差を解消するため、政府は“Ísland Ljóstengt”(アイスランド光接続)プログラム(2016–2022年)で人口希薄地域への光ファイバー敷設を助成 [20]。この政策で約5,500カ所の農村にFTTHを導入、従来であれば採算不可能な場所にも提供 [21]。その結果、2022年にはADSL(10Mbps未満)利用は全体の1.3%・約1800軒にまで低下 [22]。それらでもVDSLや固定無線の選択肢が残っています。政府の施策は続いており、2024年には2026年までに全住宅・事業所の100%光回線化目標を新たに設定、最も遠隔なコミュニティへの助成金も拡充 [23]。つまり将来的には最も離れた農場や漁村もギガビット級ネットが利用可能となるでしょう。完全なオフグリッドの場合、固定4G/5G無線や新興の衛星回線(下記「衛星インターネット」参照)が穴を埋めつつあります。地理はもはや障壁ではありません。レイキャビク中心部でも遠くのフィヨルドでも、アイスランド人は高速ブロードバンドでインターネットを利用できます。2021年時点でアイスランド家庭の98%が自宅でインターネット接続 [24]と、欧州最高水準です。
要約すると、インターネット接続の種類の大多数は光ファイバーで、DSLおよび無線はもはや珍しくなっています:
接続方式 | ブロードバンド回線構成比(2023年末) |
---|---|
光ファイバー(FTTH) | 88.7% [25] |
VDSL(FTTC銅線) | 10.3% [26] |
ADSL(旧型銅線) | 0.9% [27] |
固定無線 | 0.2% [28] |
このような光への極端なシフトは、アイスランドが一気に次世代インフラへ移行したことを物語っています。サービス品質も全国均一で高水準—固定ブロードバンドの97.9%以上が30Mbps以上のダウンロード速度を提供 [29]、大半は500Mbps~マルチギガビット速度 [30]。ほぼ半数の回線が1Gbps以上をアナウンスしています [31]。アイスランド特有の冬の嵐でも通信断はごく短時間で済み、深刻な停電のみが一時的なインターネット停止原因となる程度です [32]。
主要ISP・通信事業者
人口規模こそ小さいものの、アイスランドの通信市場は競争的かつ先進的です。旧国営テレコムのSíminn独占が解消したことで現在は3社が小売市場を支配: Síminn、Vodafone Iceland(Sýnブランド)、Nova [33]。4番手のHringduや地域プロバイダーが残りを担います [34]。Síminn(旧国営)は最大規模ですが、Novaは元モバイル専業から急成長し、モバイル・固定とも大手2社に並ぶ存在へ [35]。実際、Novaは携帯ユーザー数で最大手に成長し、光ファイバーへの展開も進んでいます [36]。Vodafoneも新たにSýnとして再編され、複数分野で堅調な地位を堅持しています。以下の表は上位ISPsと市場シェアです:
ISP(事業者) | 固定インターネット | IPTV | 固定電話 | 市場シェア (2021) |
---|---|---|---|---|
Síminn | あり | あり | あり | 45.4% [37] |
Vodafone(Sýn) | あり | あり | あり | 24.2% [38] |
Nova | あり | なし | なし | 17.9% [39] |
Hringdu | あり | なし | あり | 10.1% [40] |
その他(合算) | 主にデータ | さまざま | さまざま | 2.4% [41] |
Síminnは歴史的に国営通信会社(郵便局から分離)で、現在も広範なインフラを維持。近年ではネットワーク資産をMílaに分離、2022年には外部資本に売却されさらなる市場開放が進みました [42]。Mílaは主なホールセール網運営者で、光ファイバーネットワークを他の小売ISPへ中立的に貸し出しています。Ljósleiðarinn(レイキャビク光ファイバー網。元・自治体所有)も独自の回線を首都圏や地方へ伸ばし第2のファイバーネット運営者です [43]。他にも北部のTengirや西フィヨルドのSnerpaなど地域ネット網も存在 [44] [45]。オープンアクセスモデルのため、多くの地域で顧客は自宅の引き込み回線の所有者に関係なくISPが選べ、サービス面での競争が担保されています。
総じて、アイスランドのISP市場では実効的な競争が固定・モバイル両方にあり、価格は比較的抑えられ品質も高水準 [46]。家庭用インターネットの価格は最安プランで約5,000ISK(約3,500円)から、ギガビット級最高プランで10,000ISK(約7,000円)超ですが、アイスランドの高い所得水準を考慮すれば広く手ごろ(中央値世帯所得の1%程度以下)です [47] [48]。しかも、主要3社はIPTVや固定電話とのバンドルも一般的で、固定回線にはデータ容量制限なしです。カフェや公共施設、バスまでもWi-Fiスポットが豊富で、住民も旅行者もほぼ誰でもインターネットにアクセスできます [49] [50]。
規制の観点では、アイスランド電子通信庁(ECOI)(旧郵電監督庁)が業界を監督。2024年には政府系緊急通信会社Neyðarlínanがユニバーサルサービス事業者に指定され、従来のMílaに代わって最低限の通信・インターネットを全市民に手ごろな価格で提供する責任を担っています [51]。しかし実状としては、民間投資と政府施策によるきめ細かな接続拡充がほぼ全員ネット利用可能な社会を既に実現しています。
圧倒的な高速&世界ランキング
アイスランドのインターネット速度は世界最高クラス。全光回線ネットワークと最新モバイル技術の賜物です。固定ブロードバンドの平均速度については常に世界トップレベル。2024年初頭時点で世界6位・平均242MbpsをSpeedtest.netデータで記録 [52]。2025年1月には約282Mbpsに達し、世界5位となりました(上位はシンガポール、UAE、香港、フランスのみがアイスランドを上回る) [53] [54]。ヨーロッパでも明確なリーダー格で、平均281.95Mbpsはデンマーク(247.6Mbps)や欧州平均を大きく上回ります [55] [56]。中央値でも約214Mbpsと世界トップ10。ギガビットプランが広く普及し、73%以上が500Mbps超をアナウンス [57]。アップロードも対称型が多く、ヘビーユーザーや配信者・企業も快適に利用できます。
モバイル速度も見事。5Gネットワークでは、レイキャビクや他都市のユーザーが200Mbps超を普通に体感。全国ベースでもモバイルの中央値(報告では約129~214Mbps)と世界トップ(概ね5~10位)です [58] [59]。4G LTEも(混雑のないネットワークと広域カバレッジにより)常時数十Mbpsは出ています。世界平均モバイル速度は約63Mbps [60]なので、アイスランドのモバイルは数倍速い計算です。国内レイテンシも小さく(ゲーミングやビデオ通話向き)、ケーブル多数でロンドン20ms未満・ニューヨーク約60msも実現。2G/3Gが2025年までに終了し、4G/5Gへの帯域転用・高速化が進行中 [61]。各社とも5G NRカバー強化中で、Síminnはエリクソン社と5G全国展開(2022年末までに)で提携 [62]。2023年時点で5G信号は大半の町と主要交通路を網羅。2021年時点で人口の約50%は5Gカバー下で、現在その割合はさらに拡大 [63]。つまり光でもモバイルでも、アイスランド人は世界を凌駕する高速かつ信頼性の高いネット体験ができています。
固定ブロードバンドの先進性は、加入者の97.9%が30Mbps以上 [64]、半数以上で1Gbps対応 [65]という数字に現れています。多くの先進国が30Mbpsや100Mbpsのユニバーサル目標を掲げている中、アイスランドでは100Mbpsがすでにスタンダードで、マルチギガ領域を目指しています。2021年までに人口の99.9%に100Mbps以上提供という国家目標も実現済み [66] [67]—「国際基準でも野心的な目標」を地方交換局含め光化でクリア [68]。現在はさらに100%ギガビットファイバー網という高みへ。
アクセシビリティと手ごろさ
アイスランドのインターネットは単に高速なだけでなく、ほぼ全住民にとってアクセス容易かつ比較的手頃で、きわめて包摂的なデジタル社会を実現しています。すでに述べたように、自宅インターネットはほぼ全世帯で利用でき、人口の99%がインターネットを利用 [69]というデジタルディバイドがほぼない環境。低所得層・農村部もユニバーサルサービスや助成策、例えば政府のテレコム基金・Ljóstengtプログラムで光ファイバーや無線接続の初期費用が補助され、選択肢を保障。図書館や学校、公共サービスセンターも公衆インターネット拠点として利用でき、家に回線がない(多くは個人の選択によるごく少数派)場合もインターネット利用が可能です。都市部にはフリーWi-Fiも多く、モバイル通信プランも十分安価なので大多数の人が外出先でもスマートフォンでネットを活用しています [70]。
価格面では、アイスランドの生活費自体は高いものの、ブロードバンド料金は欧州平均と同等水準。標準的な無制限プランで月額5,000~6,000ISK(約4,000円)、100Mbps前後が含まれます。政府は小売価格を監視し、公正維持のために田舎回線の卸値引き下げ等も規制当局が実施 [71]。加えて2017年以降、主流の固定回線にデータ容量制限や通信量規制はありません。つまり本当に「使い放題」が標準となり、娯楽・教育・遠隔医療など幅広い利用が安心です。市民のインターネット品質・利便性への満足度はきわめて高く、実質的にアイスランドの生活に不可欠なインフラとなっています。
政府方針・デジタル施策
アイスランド政府は、全国規模の接続性成功の中心的役割を果たしてきました。明確な国家デジタル戦略のもと、ブロードバンドを基幹インフラと位置付けた政策を十年来推進。重要な施策の一つが「Ísland Ljóstengt」(アイスランド光接続)で、2020年までに全市民が100Mbps以上利用可能にすることを目指しました [72]。この事業やその後継フェーズでは、2020年に4億ISK超、2021年に1.8億ISKの補助金を通信事業者や自治体に拠出し、民間投資だけでは届かない地域へ光ファイバー敷設を促進 [73] [74]。この官民連携モデルで、ほぼ全域で高速回線化を達成。2024年には新たな目標として2026年までの100%ファイバー化を掲げ、未整備の農村部に限定補助金が追加されました [75]。テレコミュニケーション基金(Fjarskiptasjóður)はこうした農村高速化事業の資金源として機能 [76]。
規制面でも公平性が確保されています。通信規制当局(ECOI)はローカルループアンバンドリングやMíla回線のオープンアクセスを徹底し、新規ISPの参入・競争促進を確保。4G/5Gライセンスの割り当ても、3事業者すべてが全国展開できる形でスペクトラムオークションを管理 [77]。人口希薄地でも複数事業者あるいは異なる技術から選べる場合が多くなっています。デジタル包摂プログラムも展開され、例えば高齢者向けデジタルリテラシー講座や公共ウェブのバリアフリー対応(アイスランド語・英語)などが整備されています。実際には既に大多数がネット利用中のため、ディバイド問題も「利用レベル格差」(高齢層が基本利用のみなど)程度となっています。
もう一つの政策的要素はレジリエンス(強靭性)・セキュリティです。アイスランドには国内トラフィックを内部完結させる唯一のIX(RIX: Reykjavík Internet Exchange)があります [78]。政府は事業者と連携して、海底ケーブル複数・基地局予備電源など重要インフラの冗長性を強化。2019年の嵐で極東部の通信が短時間停止したことを受け、当該エリアのバックアップも拡充されました [79]。サイバーセキュリティは国家組織のCERT-IS(インシデントレスポンスチーム)が一括対応 [80]。いずれもインターネットを基幹インフラととらえる国の姿勢を反映しています。
さらに、アイスランドはEU/EEAの枠組み下(EU非加盟だがEEA経由でEU通信規則を受容)で、ネット中立性・ローミング・データプライバシーも欧州規格に準拠。EUの「ローム・ライク・アット・ホーム」政策も適用されており、アイスランド人が欧州旅行でも国内料金でデータを使え、逆も同様です [81]。こうした国際連携は消費者の利益にもなっています。
遠隔地向け衛星インターネット
光回線・モバイル網がほぼ全域をカバーする中、アイスランドはさらに衛星インターネットという次の選択肢も積極的に導入しています—特に超遠隔地や特殊用途向けに。2023年2月、SpaceX社のStarlink衛星回線がアイスランドで利用可能に [82]。低軌道衛星星座で空が開けていればどこでも高速インターネットを受信可能で、山小屋、研究基地、船舶、遠隔農場などファイバーや基地局設置が困難な場所の常識を覆します。都市部並みの150~200Mbpsの速度が報告されており、地上局なしでもサービスを開始(通信は他国ゲートウェイ経由なのでややレイテンシ加算)されています [83]。それでも遅延は約60~70msと従来の静止衛星方式とは一線を画し、ほとんどの用途で実用的です。
Starlinkの普及は現状ごく一部ですが、これは既存の地上・無線回線が十分あるためです。とはいえ、今まで接続手段がなかった辺境や、例えば高地の観光キャンプや一部漁船がStarlinkでネット常時接続を実現。国家ネットワークの冗長性強化にも貢献しています。災害などで地上インフラが断たれた場合(火山噴火や洪水の影響など)、Starlinkは緊急バックアップ回線として地域を繋ぐ役割も期待。旧来型のInmarsatやIridium衛星も長らく利用されていますが高額・低速で、一般家庭向けとは程遠い存在でした。Starlinkの登場(2023年)は初めて一般消費者も手の届く本格衛星高速インターネットを実現。今後インフラ外縁はさらに縮小し、政府も全員・どこからでもインターネットが可能となる衛星サービスを歓迎しています。
イノベーションと今後の展望
アイスランドのインターネット・エコシステムは将来のテクノロジーと需要変化に備え進化を続けています。今後の主な発展・トレンドは:
- 全戸光ファイバー化&銅線全廃: 向こう数年で全家庭・事業所への100%光ファイバー網が実現目前 [84]。これは銅線(旧電話線・DSL)全廃とも連動し、Síminn/MílaはすでにPSTNや旧型DSL設備の段階的廃止を開始 [85] [86]。2020年代半ばには世界でも稀な全固定網ファイバー化国家に。全国マルチギガ標準や保守の効率化(旧設備不要)、今後の需要増にも柔軟に応えられる体制です。
- 次世代モバイル(5G/6G): 5Gがすでに普及し、将来的な6G対応も見据え加速度的に進化中。5Gの導入で固定無線アクセス(5Gホームルーターによるブロードバンド)も普及し、一部農村部ではファイバー待ちの家庭の代替として活用。スマートグリッドや地熱発電の遠隔監視などIoT導入も加速。全ての世代を5G/将来の6Gに振替中であり、アイスランドのリテラシーの高さも次世代通信の早期導入を後押ししています。
- 国際接続&データセンター: 2023年開通の新IRIS海底ケーブル(アイルランド直行)でヨーロッパへの第三の経路を確保(ほかFARICE-1[スコットランド]、DANICE[デンマーク]) [87]。さらにGreenland Connectで北米へも直結 [88]。こうした多重化と、Verne GlobalやatNorth等大型データセンターの進出(再生可能エネルギー・寒冷気候・太いネットパイプが魅力)が国際帯域消費を押し上げ、北欧データハブの地位を確立しつつあります。将来、北米直結の新ケーブル構想さえ取り沙汰されており、インフラは「新しい漁業産業」とも称される国家成長の柱です。
- 先端技術導入: 規模は小さくてもアイスランドはネット技術実験に積極的。欧州初の10Gbps家庭向けブロードバンド(Míla・Ljósleiðarinn両社が一部エリアで提供中)もその一例 [89] [90]。IPv6全国実装の準備(高い導入率)。極地衛星通信や高高度プラットフォームで氷河ステーションや船舶向けの研究も行われています。さらに遠隔基地局の無線バックアップ、エッジコンピューティングの試験運用など、ネットワークのたくましさ&次世代化を維持する努力が続きます。
まとめると、アイスランドのインターネットは今後も「より高速・より安定・どこでも」を目指して邁進し続け—しかも全設備が100%再生可能エネルギー(地熱・水力)で駆動というユニークさも維持。世界中どこよりもデータ駆動社会に備えた国のひとつとなるでしょう。
世界・北欧との比較
アイスランドは世界的にも北欧諸国の中でもどう位置付けられるのでしょうか?一言でいえば、きわめて優秀です。アイスランドはネット利用率・速度・普及率いずれにおいても国際比較で一位争いを繰り広げています。たとえば99%以上のインターネット利用率は世界最高レベルで、ノルウェー等の他の北欧諸国と並びます [91] [92]。速度面では、アイスランドはすべての北欧諸国を上回っており、デンマーク・スウェーデン・フィンランド・ノルウェーの平均速度(たとえばスウェーデンは約175Mbps、アイスランドは約282Mbps) [93] [94]。これは光ファイバーへの一気通貫投資が要因で、スウェーデンやノルウェーが今なおケーブルやDSLの割合が一定あるのに対して、アイスランドでは85~93%が全て純粋な光回線 [95] [96]。OECDの2023年調査でも「光回線割合80%超」の数少ない国(韓国・日本と並ぶ)となっています [97]。ギガビット加入者の割合も他国より高い傾向です。
モバイルネットワーク比較では、全北欧とも4G/5Gカバー・利用率共に高いですが、アイスランドは人口規模・地理的集中から5G展開がより迅速で混雑も少ないのが利点。ノルウェー・フィンランドは人口密度こそやや低いものの分散しており、アイスランドのような沿岸部集中型ではないため、特に速度面でアイスランドが僅差ながら上回る傾向(2021年5G世界一はノルウェーという報告もあり)。価格水準も、全北欧に共通して「所得対比で手頃」であり、アイスランドもノルウェー/デンマークと同等、スウェーデンやフィンランドに比べやや高いが差はごく僅か。北欧はすべてネット中立性とユニバーサルサービスを徹底しているため、「基本的な接続」の問題はありません。
特に高速アクセスの浸透度ではアイスランドが突出。例えばフィンランドのラップランドやノルウェー北部は今もラジオリンク等が残る地域があるものの、アイスランドでは100%ギガビットや無線によるカバーが現実に。2026年までのギガビット全域化宣言も多くの国が掲げていない野心的ターゲット。文化面でもハイテク志向が強く、SNS利用やインターネットバンキングも世界最上位レベル [98]。小国でありながらインフラ・政策・普及全てで「重厚な一流国」に並ぶ、ネット先進国のロールモデルとなっています。
結論として、アイスランドのインターネット発展の物語は野心と達成の物語です。凍てついた火山島を光ファイバーで網羅し、世界有数の高速ネットワークを構築し、すべての市民がその恩恵を享受できるようにしたこの国—そのインターネットエコシステムは規模で見ると巨大国と互角、時には凌駕するほど。火と氷の国が示したとおり、「最も遠い場所でもデジタル時代の超接続社会が可能」であることは、スマートなインフラ投資・競争・先進的な政策でインクルーシブかつ高性能なインターネット社会が実現できる好例です。 [99] [100]
References
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